ユニコン24時

ヨーロッパは遠い?

2007.02.01

なに様コラム

先日見ていた日本のトレンディ・ドラマで、自分の夢のためにフランスに旅立つことになったある女子高生の彼氏が、二人の愛が真実ならパリに行くべきだという親友たちの後押しを受けてパリに出発するという感動的な場面をやっていた。

そういえば成田空港を舞台としたこの手の涙と感動的な別れのシーンって日本のドラマや映画ではけっこうお馴染みだ。でも何か違和感を覚えた。このドラマではその高校生もその友人も超大金持ちで学校の授業も殆ど受けず毎日遊び人生活を送っているという設定だった。そんな彼らにとって飛行機で片道11時間程度のパリに行くことがまるで今生の別れのように大げさな別れを意味することなのだろうかという疑問が沸いた。
全員ヒマな金持ち連中なんだから行きたきゃ1泊2日でもなんでもミンナで一緒にパリに行けばいいのだ。それだとドラマにならないので感動的な別れを演出したとは思うけど時代錯誤のような気がした。そしてこの国際化社会にあってもなお一般の日本人にとって外国に行くってまだまだ大変なことなんだということが不思議に思えたのだった。

そういえば日本のテレビ番組で相も変わらず人気を保っているのはスチュワーデスもののドラマだ。
たいていは某航空会社の国際線スチュワーデスがさまざまな国々で起こる事件を人々との触れ合いや風景などを織り交ぜながら解決するという実に他愛もない内容なのだが、多分にスチュワーデスという職業への庶民が持つ憧れが人気のベースになっているように思う。でもスチュワーデスって確かに英語力を駆使し海外をまたに駆け、有名デザイナー作によるユニフォームを着て颯爽と歩く姿はかっこよくはあるが良く考えれば空飛ぶウエイトレスさんという肉体労働者なのだそんなスッチーをヒロインにしたこのようなドラマがけっこう受けたりするのはやはり憧れの外国を仕事場にする彼女たちが文字通り雲上人だというイメージが、いまだに日本の一般庶民にあるからなのかもしれない。また通信や交通が発達し、まるで国内にいるのとたいして変わりも無い現実のロンドンやニューヨークなどの生活の現実は日本ではあまり話題にならない。
ロンドンで生活する多くの日本人であれば、憧れや妄想で取り上げられる日本のメディアを通した外国生活が前時代的なものであることはすぐに分かる。では何故その現実が日本で広く知られないのだろう。つまりカッコ悪いのだ。ロンドンの真ん中で日本の書籍を立ち読みし、その帰りにカツカレーやラーメンをかっ食らい、夜はカラオケで演歌を熱唱する姿がカッコ悪いのだ。そしてそんなロンドン生活を送った人たちが日本に帰ると「やっぱイギリスって階級社会で保守的よね~。」などとステレオタイプのコメントを発し、何も知らない田舎モノの日本人は「やっぱりねえ~」と頷くのだ。そして「英語はもうペラペラよね~??」と想定内のことを聞かれると「ウン。生活には困らなくなった程度かな~」と日本に到着する前から用意していたどうにでも理解される曖昧な返事をするのだ。

今日も日本のテレビドラマでは、滑走路を颯爽と飛び立つ飛行機の場面や、ペラペラの英語でカッコ良く「新聞いかがっスか~?コーヒーいかがっスか~?毛布いかがっスか~?」と叫んで回る機内でのスッチーの姿とかをバックに、劇的な別れのシーンが繰り広げられている。

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