ユニコン24時

ビンボーな日本人はどこへ行く

2006.11.01

なに様コラム

エリコさんは日本の大学卒業後10年近くファッション系の出版社に勤務していた。仕事がら海外との交流や情報収集が今後のキャリアにとって不可欠と考え留学することを決めた。
当初は大学院を目指すという希望ではあったが、長く英語から遠ざかっていたこともあり、まずはファッション・ビジネスの基礎科(1年間)に昨年入学した。その彼女が1年のコースを修了後、大学院には進学せず日本に帰ることにしたのでお別れの挨拶にユニコン事務所に来た。

ひととおり世間話した後、なぜ当初の大学院進学を諦め帰国することにしたのかという話題に移ると彼女は目を見開いて急に饒舌になった。

エリコさんは言うのだ。
「私絶対にかなわないと思ったのです。誰に対してって??クラスや寮で一緒になった中国人や韓国人に対してです。彼らは本当に金持ちでおまけに英語だって私たち日本人よりずっとできるんです。私は日本にいるとき彼らがこれほど金持ちだってこと本当に知らなかったんです。だって日本にいる中国人と言えばラーメン屋とかフーゾクでバイトしてせっせと本国の家族に仕送りしている人ばっかりだし。でも私が住んでいた寮の隣の中国人留学生は入寮するや否やベッドから机、電球に至るまでデパートに全てオーダーして揃えたのです。そして、退寮するときには何とそれらの家具を全て捨てるというので私と他の日本人学生で分けてもらいに行ったのです。その中国人学生はその後、市内の高級アパートに引越ししたのですが、その時また新たに全ての家具や生活用具を買い換えたのですよ。また食事といえば殆ど外食で、これまた私たち日本人学生はよくご馳走になりました。
おまけに彼らはメチャクチャ勉強するしよい点数をとるためには手段も選ばないんです。1年間同じクラスにいた韓国人学生は入学当初殆ど英語ができなかったのに、終わりころにはもうペラペラなんです。おまけに彼らのガッツというか人を押しのけても主張し我を通す姿勢は私たち日本人にはマネできません。へたに大学院なんかに行って苦労の末やっと卒業し就職できたとしても経済発展が著しいこのような国々とのビジネス競争からは逃れられませんよ。彼らには絶対かなわないって思うし、付き合っていける自信もないです。こんなことを言うと情けないとか根性が無いなどと言われそうだけど、それは他人事だから言えるわけで実際にロンドンにいる中国人・韓国人留学生をみれば誰しもそのような気持ちになりますよ。結局私は日本に帰り、静かに目立たず気心知れた日本人の中だけで地味に生きて行くことに決めました。それがはっきり分かっただけでも私の留学は大きな意味がありました。」

エリコさんのこのような話を聞いているうち何か絶望的な気持ちになった。確かにロンドンの中心街をブランド物で着飾って闊歩するアジア人といえばつい10年前まで日本人と相場は決まっていた。ところがどうだ今は中国人や韓国人なのだ。エリコさんの話でそれを改めて再認識することになった。
バブル経済の破綻後長く低迷していた日本の景気もやっとこのごろ改善の兆しが出てきていると言われている。しかしホリエモンや村上さんみたいな人を除けば、多くの日本人にはその実感はないようだ。この10年に渡る長い景気低迷が家計に与えたダメージは多少の給与・ボーナスの増加で補えるほど小さくないし、それ以上のダメージは日本人の自信を喪失させ精神的な閉塞感を植えつけてしまったことだと思う。つまりエリコさんではないが、自分が熾烈な国際競争のなかにあるのは分かっていても、それに立ち向かい挑戦する自信も気力もなく、留学や英語などで苦労してそんな中に飛び込むよりも国内でこぢんまりと波風立てずに心地よく生きて行く人たちが集う日本は「ひきこもり」国家になるのかもしれない。

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