小迫さんが編集部に送った原稿の文章が素晴らしすぎたので、スペースの関係でガイドブックに掲載できなかったロンドン留学体験についてもユニコンウェブサイトで紹介いたします!
セントマ-チンズが常に世界のアート&デザイン、クリエイティブ業界を牽引してきたカギとなる教授法、英国大学で学ぶ意義、ロンドンでの生活など、貴重なお話しが満載です!
*****************************************
■英国留学を決断した理由
最終学年を目前にしていた大学3年生後期、当時学んでいた政治分野にこのまま進路を進めていくかどうかという悩みを抱えていました。
アートに興味を持ちながら、チャレンジしなかったことを後悔する気持ちと、3年生ですでに単位を取り終わっていたため、大学最後の1年を手持ち無沙汰にしたくはないという思いが重なったことが、アート留学を決断したきっかけです。
イギリスにあるセントラル・セント・マーチンズを志望した理由は、日本でも知名度の高い学校であったこと、また日本の芸術大学と違って技術面よりもアイデア面での教育を重視するという評判からですが、ロンドンというロケーションも魅力的でした。英語環境であることや、治安やシステムの整っている国際都市であることが、安心した留学生活、勉学への集中につながると考えたからです。
■情報収集や留学の準備に関して
英国に留学していた友人・インターネットでのリサーチから事前に分かったことは、ロンドン留学はとても費用がかかるということです。
私は授業料を除いた生活費は自分でまかなう予定だったため、当初物価と家賃の高いロンドンでの生活には大きな不安がありました。条件に合う奨学金制度なども見つけることはできなかったのですが、新生活を始めるにあたって教材購入や引越しなど出費がかさむことを見越し、貯金には努力しました。
渡英前は短期的にアルバイトを4つ掛け持ちするというハードな日々でしたが、実際に渡英直後の夏には190円台にのぼるほどのポンド高に。資金を十分に貯めておいて良かったと改めて感じることとなりました。英語力については特に準備といったことはしていませんが、留学をきっかけに語学力を伸ばしたいと考えているので、今は移動時間などにメトロ新聞やオンラインを利用して学習するようにしています。
■英国のアート教育
私のコースでは毎週新しいプロジェクトが課題として与えられます。テクニックを学ぶような課題も稀にありますが、授業は技術的なことはあまり教えてくれません。その代わりにアイデアをどのように作るか、それをどのように作品に変換するかを教えてくれます。
授業はプロジェクトごとに複数のチューターと自分の作品やアイデアについて相談するという形で進みます。チューターたちは知識・経験豊富で熱心、厳しい意見をくれることもありますが、生徒が真面目に取り組んでいる限りとても大きな助けになってくれ、そして作品のプロセスをとても評価します。
例えば、アイデアはどのように生まれたか、その作品を作る意義は何か、なぜその媒体・材料・色形なのか、十分な実験やリサーチはされたか。シンプルな授業に聞こえますが、リサーチから得たインスピレーションやチューターらのアドバイスを受けて自分がどのように作品を変えていくか、そしてそれを繰り返すことで驚くほど成長します。
■余暇の過ごし方
朝は学校の開始時間が10時半と余裕があるので、週に2回ほどはヨガ教室に通ってから登校します。ロンドンのいいところのひとつは、色々なスポーツ施設があること。スポーツジムも日本と比べて費用が安いのと、学割もきくので、利用している学生が多いです。
また授業が週3回しかないので、平日残りの2日の日中はインターンをしています。ファインアートやフィルム作品の展示会をコーディネートする会社で働きながら、WEBデザインを学んでいます。
忙しい平日とのメリハリをつけるために、土日は完全に休みをとり、フラットメイトやクラスの同級生と新しいスポーツや美術館、展示会に出かけることが多く、イギリス国内で日帰りや一泊の旅行に行くこともあります。
同級生は年下がほとんどなので、学校以外のプライベートで遊ぶということは少ないですが、バイト先の同僚や以前フラットをシェアしていた友達とは頻繁に連絡を取り合って、交流を深めています。
■住居、アルバイトなど、生活について
現在ノースロンドンにある三階建て一軒家をイギリス人男性と2人でシェアしています。ロンドンでのフラット探しは家賃が高額な上に家は他人とシェアが当たり前、渡英直後は収入もなかったので、節約のため短期間ですが4人部屋や2人部屋でのルームシェアも経験しました。
またこちらでは部屋探しアプリなどでのフラットハンティングが主流で、簡単に見つかりますが、欠陥住宅や大家さんとのトラブルもよく耳にするので、私は今のフラットはきちんと契約書作成やアフターケアをしてくれるエージェンシーを介しました。
エリアによって全く生活が変わってくるのもロンドンの面白いところです。西ロンドン、南ロンドンと住んできましたが、今回北を選んだ理由は学校・インターン先・アルバイト先のどれへも距離が近く、安全、それでいてトレンディな東ロンドンへのアクセスも良いから。今のロケーションとライフスタイルにはとても満足しています。
■英国留学を経験して
こちらの教育はとてもストレート。悪い作品は悪いと言われます。しかしそれを通して、どのようにモチベーションを維持するかなど、自分の心をコントロールすることを学びました。
イギリスの生徒は高校課程で専門的な教科を修了してから大学に進学します。グラフィックデザインに限って言えば、ソフトウェアを使いこなせて、カメラスキルもある人たちばかり。彼らと比較して、アートの学習経験がない私は自分が劣っていると感じることもありますが、あえてそういうときこそ自分の作品についてどこがよくないか周りに意見を求め、時には褒めてもらう。またいいなと感じた他人の作品に対しても質問するようにして、落ち込んでもすぐ次に取り組まなければいけない環境を自分で作れるようになりました。
留学は今まで慣れ親しんできたものから離れることで、寂しく大変な思いをすることも確かですが、同時に自分がどういう人間かを教えてくれる、そして成長できる良い機会だと思います。
■今後について
当初は現在のコースを修了後は帰国し就職しようと考えていましたが、今は学んでいる分野を本気で継続して行きたいと考えるようになり、大学院進学を検討しています。
現時点では芸術大学で本格的に勉強し始めてさほど時間も経っていませんが、この短い間で私の視野を大きく広げてくれたセントラル・セント・マーチンズでの教育はもちろん、そのほかにもロゴ・パンフレットデザインやカメラアシスタント、雑誌製作、ブックカバーデザインなどといったあらゆるジャンルの仕事に携わる機会に出会えました。それが自分にとって勉強となり自信になり、進みたい道を明確にしてくれました。私は今のコースでグラフィックデザインを専攻していて、グラフィックデザイナーという職に就きたいと考えています。現在通っているのはアーティスト養成に焦点を当てている大学なので、大学院にはロンドンにあるデザイン学校を出願先にしようと考えています。
■英国留学に持っていくと便利だと感じたもの
PCや携帯電話のほかに日本製カメラ、海外対応のヘアアイロンなどを持って行きましたが、特に活躍しているのは日本の活字が恋しくなった場合を想定して購入したKindleです。
実はロンドンには日本の書店があるのですが、お店の規模は小さくまた価格も高いので、Amazonで簡単にダウンロードした電子書籍をKindleで楽しんでいます。
また電気製品ではないですが、日本の差し込み口に対応した変換プラグは持って行くべきだと思います。対イギリス用だけでなく他の国のコンセントにも対応したものを用意しておくと、留学中に海外旅行などに出かけた際も安心です。
■絶対に持って行った方がいいもの
ジェットストリームなど細くてスムーズに書ける油性ボールペンは、こちらにはあまりないので10本まとめて買って持って行き、重宝しています。
またタオルハンカチもヨーロッパでは滅多に売っていないので、よく使われる方は持って行ったほうが良いです。特定の薬を常用されている方はもちろん滞在国にも持って行かれるといいですが、ただ風邪薬や花粉症の薬などといったものは現地のものを買ったほうが良いと思われます。こちらで引いた風邪はこちらの風邪薬でないと効果がないためです。
■出発までにしておくとトクする準備
銀行で口座を開設し、インターナショナルキャッシュカードを発行しました。
私は新生銀行を選びましたが、その理由は手数料が比較的安いことと、現地通貨を引き出す海外ATMの対応数が多いことでした。送金などしてもらう機会があるときに便利です。
またロック機能付きのUSBメモリーにパスポートや学生証のコピー、航空券Eチケットやバンクステイトメント、大学からのオファーレター、IHSナンバーなどのデータを入れたものを、旅行に行くときは持ち歩いています。これは実際にポルトガルに行った際スチューデントビザカードが入った財布を盗難に遭い、イギリスに戻った際イミグレーションオフィスで提出し、スムーズな再入国に役立ちました。こういったもしものトラブルを想定しておくこともヨーロッパでは重要です。
小迫としか(こさことしか)さん
【留学した都市】 London
【留学した学校】 University the Arts of London, Central Saint Martins
【コース】 Foundation Diploma in Art & Design: Graphic Design & Communication pathway
【留学期間】 2015年4月~現在も留学中
【留学準備の開始時期】 留学の4ヶ月前
【渡英直前の英語力】 IELTS 6.5
【滞在方法】 フラットシェア
【授業料を除いた1ヶ月のだいたいの生活費】 900ポンド
以下、記事の内容です。
*****************************************
■英国留学を決断した理由
私はアメリカの大学に留学していて、ニューヨークの美術大学に編入するつもりでした。しかし、英国に旅行する機会があり、ロンドンを訪れて衝撃を受けました。私が理想に描いていた環境がロンドンにあったからです。それを機に、渡英することを決めました。両親には反対されましたが、どうしてもロンドンに行きたかった私は、英国の大学の仕組みやなぜ行きたいと思ったのかを説明し、自分の熱意を伝え、両親の理解を得ることができました。
■英国のアート教育
私は現在、ファウンデーションコースでFine ArtのPaintingを学んでいます。常にReflective Journal(日記のようなもの)とInformation File(リサーチなど)をネット上で進めながら、スケッチブックにアイデアを描き、試作をつくってみて最終的な作品を制作していきます。日本と英国の美術教育には違いがあり、私の通っていた美術系の高校ではクオリティの高い作品が良いとされ、final outcomeを重視していました。しかし、英国ではfinal outcomeよりもprocessの方が大切で、最初に浮かんだアイデアをどう発展させるかが重要とされています。ある先生には「作品が胎児だとしたら、アイデアは受精卵です。それを人間の形にするには何かを加えたり、削ったりしなければなりません。受精卵がそのまま大きくなってしまうだけだとダメなのです。アイデアをDevelopすることで、すてきな赤ちゃんになるのです」といわれました。
■英国での滞在生活
ロンドンでホームステイ、寮、オーナーとのフラットシェア、友人とのフラットシェアのすべてを経験しました。ホームステイの良し悪しは、相性や運だと思います。その後はカトリック系の寮に滞在しましたが、結構門限が厳しかったです。現在は英国人の友人とアパートをシェアしながら楽しく暮らしています。
■英国留学を経験して
留学で最も大切なのは「自分と向き合うこと」だと思います。異国の地で自分がやりたいことは何か、将来どうするべきなのかなどを考えたり、外へ出て母国がどんな場所なのかを理解したり、世界で何が起きているのかを考えたり。それが留学で得ることができる貴重な経験だと思います。
田口愛子(たぐちあいこ)さん
【留学した都市】 London
【留学した学校】 Central Saint Martins
【コース】 Fine Art, Painting
【留学期間】 2014年2月~現在も留学中
【留学準備の開始時期】 留学の2ヶ月前
【渡英直前の英語力】 IELTS 5.0
*****************************************
後日談・・・
この留学体験記取材後の2015年5月に開催されたセントマーチンズのファウンデーションコースのShowに来場したロンドンのギャラリー関係者が田口さんの作品をとても気に入り、何とこの度ロンドンのギャラリーとアーティスト契約を結ぶことになったという素晴らしいニュースが飛び込んできました!
イギリスは若手育成に尽力する国、そして世界中から人が集まる大都市ロンドンは若手が発表する場が多く、とりわけ才能ある未来の偉大なるアーティストの卵の宝庫であるセントマーチンズのファウンデーションのshowにはギャラリーやメディア関係者が数多く来場します。
内向きな性格の日本人は見知らぬ人に話しかけるという積極的なアクションを起こす習慣がありませんが、ロンドン芸大のShow、Exhibitionでは来場したお客様と会場にいる学生が意見交換をしたり、その場で「作品を買いたい!」と話がまとまることは珍しくありません。
若者であろうと学生であろうと一人のアーティストとしてリスペクトしてくれるのがロンドンの魅力です。
それでもファウンデーション学生でアーティスト契約というのは近年あまり聞いたことがなかったので、田口さんに更にくわしくユニコンでもインタビューをしちゃいました。
ユニコン執筆の体験記は近日公開します!!!!
そんな時に多くの方が利用されているのが民間の寮です。
ユニコンの資料でもこんな所があるよ、といくつかご紹介していますが中でも素晴らしい立地に良心的な値段で人気なのが、ロンドン北部の高級住宅街(東京で言うところの世田谷)にあるSt.Dorothysとロンドン西部のブランドショップが立ち並ぶ高級エリア(東京で言うところの表参道)にあるReligious of Mary Immaculate Hostel (略してRMI)です。
St.Dorothys: http://www.st.dorothys.talktalk.net/
RMI: http://www.rmilondonhostel.org/index.htm
(この2つは女の子限定の寮です。男性諸君、ごめんね。)
St.Dorothysには2年近く滞在しているMちゃんや数週間の短期留学の方から色々とお話を聞いていますし、ユニコンの資料にもわりと詳しく説明しているのですが、RMIは滞在された方はいるものの感想を聞ける機会がありませんでした。
(“なんか~、門限を過ぎて帰って~、友達にこっそり鍵を開けてもらったら~、後でシスターに怒られて~。だからもう泊まりたくな~い!”、という自業自得でしょという全く参考にならないフィードバックは過去にもありましたが)
そんな中、今年RMIに滞在された2人の学生さんから今後滞在を検討される方の参考になればということで、ユニコンスタッフが催促したわけでもなく(←はい、ここ重要)、自主的にご報告をくださりました!
くぅぅぅぅ!、これぞ人徳というものよね!
しかもこの滞在レポートが一人はイマイチなので途中でフラットを探した方、もう一人はとても気に入ったので一年滞在する!という全く違った感想だったので、学生に過度な期待をさせないために嘘偽りなく事実を伝えるというスタンスのユニコンで紹介するにはピッタリ♪ということで2人からのレビューをまとめてみました。
ロンドンに限らず、日本でだって住処の好みは人それぞれ。
都心派VS郊外派、一軒家派VSマンション派、日当たり重視の人がいれば収納重視の人もいたり。
ロンドン留学中にフラット探しの経験もあり何よりも立地が命!のユニコンスタッフとしては多少の不便さはあってもRMIは魅力的だなと思いますよ。
不動産バブルまっただ中のロンドンでしかもGloucester Roadという高級エリアにこの値段で住めるなんてあり得ないんだから。
私も長期滞在するならRMIに滞在したいわ♡ (年齢的に無理なのが悔やまれる・・・。)
※RMIは18歳から25歳までの女の子限定です。
Kさんの部屋(シングル) チャペルへの階段 待合室
]]>以下、記事の内容です。
*****************************************
■英国留学を決断した理由
日本の大学の写真学科に落ち、悔しくて見返してやるつもりで留学を決断しました。英国を選んだ理由は、昔からこの国の文化やファッション、音楽、アートが好きだったからです。大学に落ちてから約2か月後に渡英し、UAL Central Saint Martinsの短期コースを受講しました。驚くほど国際的で、個性的な人がたくさんいて、優しくオシャレで、かわいいカフェや古着屋がたくさんあって・・・たったの1週間のコースでしたが、ロンドンが大好きになり、そのまま入学を決めました。
■英国のファッション教育
私はやりたいことがたくさんあったので、ファウンデーション・コースでDiagnosticというのを選びました。初めの2か月間は自分が選んだGraphicとFine ArtとFashion & Textilesを勉強し、ポートフォリオ・レビューを受け、Fashion Communicationに入りました。頻繁にあるチュートリアルや成績評価に向けて課題をこなしていくのが大変ですが、楽しみながらやっています。将来はファッション誌に関わる仕事に就きたいので、Styling、Photo、Illustrationなど、楽しく勉強ができています。
■余暇の過ごし方
友だちの写真家がやっているアートスペースへ行ったり、ホリデーになればヨーロッパを旅行したり、往復£10くらいのバスを予約して地方都市へ日帰りで旅行したり・・・、楽しみはたくさんあります。
■英国留学を経験して
年齢・国籍などに関係なく、さまざまな人が同じ課題に取り組んでいる環境が刺激で、「自分もがんばろう!」と思わされます。好きな写真家にコンタクトをしてみたり、雑誌にコントリビュートしたり、自分でつくったアクセサリーやZine(自作の小冊子)、イラストなどをアートフェアで売ったり・・・日本にいたときは自分をアピールすることをしてこなかったので、そこがいちばん変わりました。
田崎志佳(たさきゆきか)さん
【留学した都市】 London
【留学した学校】 University of the Arts London, Central Saint Martins
【コース】 Foundation, Fashion Communication & Promotions
【留学期間】 2013年8月~2014年6月
【留学準備の開始時期】 留学の10ヶ月前
【渡英直前の英語力】 IELTS 5.0
☆**‥…★…‥**☆◆☆**‥…★…‥**☆◆☆**‥…★…‥**☆
instagram Follow her @yukika_88
☆**‥…★…‥**☆◆☆**‥…★…‥**☆◆☆**‥…★…‥**☆
]]>
2013年10月24日、「カフェ展示会」の招待状がユニコンに届きました。
送り主の名前は「秋山貴子」さん。おおー、懐かしー!
秋山さんはね、今から7年前のある日、いきなりユニコン・ロンドン事務所に登場した〈飛び込み〉のお客さんで当時まだ19歳だったの。
ツルピカ色白の童顔に乗っかっている ‘一途な’ キラキラ眼(瞬き少なし)。礼儀正しいせいなのか年寄り(私だよ)の威圧感に圧倒されているだけなのか、私が何か言うごとに「はい」「はい」と首をコクコクするだけ。なんか、採れたてのフレッシュ野菜みたい。素朴過ぎる!
とりあえずセントマのオリエンテーションに囲い込んだのだけど、オリエンテーションが始まって1週間後に再び事務所にやってきて「素晴らしいコースです!」と息せき切って言うの。何が?と聞くと、「私、コースの第一日目のドローイング授業であまりに感激して号泣してしまいました。私が求めていたのはこれだったって」
そりゃね、もちろんユニコンはオリエンテーション・コースが「超お得なお買いもの」だとマジで思っているし、だからこそPRしているんだけど、そこまで感激するか、フツー?(と口に出かかったけれど)感激を新たにしたのか眼元を赤くしている秋山さんを見て、さすがの厚かましい私も「いや、そこまで喜んでもらえて何と言っていいやら」と妙に照れてしまったことを覚えているわ。感受性が人並外れて濃い赤ずきんちゃん。「採れたて野菜」のイメージが変わりました。
秋山さんはその後セントマ のファウンデーションを経て同大の学部課程(ファインアート)に進んだのだけれど、毎年の授業料を大学に直接払うことを固く拒み続けたのね。ユニコン経由で払うと手数料を乗せなきゃいけなくなるから直接大学に払えと何度言っても「父がクレディットカードは信用できないって言うんです」と言い張るの。
彼女がユニコン事務所に姿を見せるたびに「ああ今年も支払いの季節になったのね。そして“父”は相変わらずクレディットカードを信用していないのね」と年月の流れの速さを味わったものでした。
その秋山さんがちょっとマイナーだけど〔吉祥寺〕のカフェで初展示とは! しかも留学時代の友人との合同展示で、その友人もユニコンの昔のお客さんだというじゃない。
これは行かなきゃね。
数日後、ユニコン視察団(2名)が着いたのは吉祥寺の駅から徒歩数分にある小さなビルの2階のカフェレストラン。「いらっしゃいませ」と迎えてくれたお店の人に愛想笑いを返しながら辺りを見回すと、四方の壁にこじんまりした作品群が飾ってある。おお、これか。
秋山さんはちょっと遅れてくると言うので「まーね、あーゆー田舎から出てくるんだもん、しかたないわね」と憎まれ口を叩きながら四方の壁につましく行列している絵をチェック。
ラッパの絵がいっぱい。それと植木鉢っていうかプラントの絵もいっぱい。
ラッパが秋山さんでプラントが友人(平山真澄さん)。
でも、あくまでラッパとプラントの行列。
この一連のラッパとプラントにはどんなメッセージがあるのかしら。
言うべきコメントが見つからなくて視察団は互いの芸術素養の貧しさを心で罵り合いながら無言に。
まー、ファインアートだし、セントマだもんね。本人が来たら説明してもらいましょう。
やがて合流した貴子さんと久しぶりの再会を祝い、まずは乾杯。アルコールはダメなんですという貴子さんはそっちのけで昼間だと言うのに視察団はボトルワインをほとんどラッパ飲み(ほぼオヤジだよ)(ちなみにランチ定食は濃いめの味付けの‘豚の角煮どんぶり’であった ★★)
まずは秋山さんの作品解説(本人による)をどうぞ。
'空を見上げてごらん。眼には見えないラッパのような管が、君の眼からするする延びて、
天に向かって広がらなかった?そして天が一杯、君の眼に流れ込みはしなかった?'
(安部公房「デンドロカカリヤ」より)
「多くの人がそうであるように、私もまた子供のころ空想世界と現実世界を自由に行き来する子供のひとりでした。それが成長に伴い、不思議と現実世界に留まる時間が長くなっていきました。これが大人になるということなのかもしれません。しかし時に、“眼には見えないラッパのような管が、天に向かってするする延びて、天が一杯、眼に流れ込むような瞬間”に出会う事は無いでしょうか?
私は人によって創作されたファンタジーやおとぎ話といった虚構の世界がとても好きです。それは、大人になると子供っぽいと笑われてしまうような虚構の世界の中にこそ事実を超えた真実を垣間見ることができるように思うからです。今回の作品はだいぶ荒削りではあったものの、“自然と人と人工とファンタジーが共存する世界”そんなことに思いを巡らせながら私の中に落ちて来た言葉のかけらを純粋に集めて編んで形にしたものです」
ユニコン:なるほど、安部公房の詩からインスピレーションを得たのね?(えーっ、安部公房と来たか。しかも‘詩’だとぉー!行きがかり上なるほどとは言ったが、若いときに安部作品に挑戦したものの理解及ばず挫折した過去を持つユニコンスタッフは茫然とするのみ)
「はい。何の変哲もない日常のなかのちょっとしたきらめき、そういったものが好きなんです。この詩もとても好きでそのイメージがずっと頭の中にあってそれをそのまま描いてしまおうと。言葉で説明しようとすると難しくて、絵をひとつの言葉として描いています。
言葉にならない言葉、言語になる前の言葉を描くというか、作品もひとつの言葉として作っています。
なんというか、現実にあるけれど現実にない、現実にはないけれど現実にある、ある意味、超現実的な。事実ではないかもしれないけど真実であることを表現したいです」
ううう、覚悟はしていたけれど概念的すぎて難しい。こういう仕事をしているくせに、私、わかりやすい言葉で具体的に説明されているものしか理解できないんだよね。安部公房より伊坂幸太郎が何倍も好きだし、東野圭吾はその何十倍も好きだし。
「私は真逆ですね。言葉で表せないものが好きというか。自分のなかには色々あるんですけどね。その色々あるものをそのまま形にしているだけです」
(超現実的な生き方をしている視察団にはなかなか難解な時間が過ぎた。言葉ってむずかしい…)
ところで今は何をしているの?(しかたなくちょっと話題を変えてみた)
「発達心理学とか幼児教育にも興味があって、今は茨城のプレスクールで英語を教えています。
私、セントマ時代に『作品についてうまく言葉で説明できない』という悩みをチューターとよくしていたのですが、『言葉にならない言葉を表現したい』と悩む私に『発達心理学を勉強してみたら?』とアドバイスしてくれたチューターのことばがきっかけです。
発達心理学や、あと口承文芸にも興味をもって調べました。子供の言葉になる前の言葉は面白いなと思いました。
あと自然的に発生した物語も好きです。ひとつの物語を通して、書かれた通りのストーリーを楽しむことはもちろん、それ以外にもモラルやノウハウを親から子へ世代を超えて伝承できるという機能をもった物語、古典的にずうっと続いている物語には興味があります。どれも言語を超えた世界観みたいなものが共通していると思います。この分野は調べてみるととても面白くて、書籍からでなく実際に知りたいと思ってスクールで働き始めました。
純粋な、言葉がうまくしゃべれるようになる前の幼児の言語に実際に触れることができておもしろいです」
東京に出る予定はあるの?
「お金を貯めたら東京に出たいですね。アートをするには、東京がいいですよね」
多分。そして売れてお金になるということも大切。社会の認知度を高めるということなんだから。
ロンドン芸大のFine Art出身の先生も言っていたわ、「アーティストはもっと社会性を身に付けて自分を売る努力をすべきだ」って。秋山さんを目の前にして言うのもナンだけど、ファインアーティストってそうした社会性に欠けている人が多いじゃない。
生き方も価値観も違う人たちで構成されている世の中の人たちにわかってもらうためにはアーティスト自身も努力が必要だと思うの。だって仲間内だけで理解しあっても発展性が無いし、わかる人にわかってもらえばいいというのは「グローバル」という宿命から逃れられない21世紀に生きるアーティストの考え方としては傲慢だと思うのよ。
「完全にそうですね。ファインアーティスト達はシャイな軍団なので。ファインアートはアーティストのためのアートだって言われちゃっています」
イギリスは新しい才能を世界に輸出するのにとても熱心な国だから若いアーティストが発掘されやすいけれど、日本のアート業界の人たちってすでに名前が売れていて金になりやすいアーティストにしか興味を示さないでしょ。だから無名なアーティストたちは自分から発信していくしかない。たとえば、稚拙なアイデアだけれど、「ブログ(っていうの?)」みたいな現代コミュニケーション武器を駆使して国内外のコンタクトを増やすとか、ロンドン芸大の卒業生グループと組んで集団力でアピールするとか。
「そうですね、他のカレッジの卒業生たちとも組んで10人くらいで大きな展示会をやりたいね~という話が今あります」
アーティストって金の計算が弱くて(だから‘純粋’と表現されがちだけど)それはいけない。お金の計算ができる営業能力のある人と組んで活動しなさい。実はセントマはここ数年前からそうした方面の大学院課程にめちゃ力を入れてるのよ。
‘MA Innovation Management’とか‘MA Creative Practice for Narrative Environment’ とか、アート実技とは何の関係も無いマネジメントのコースなの。で、受講生のほとんどが美大以外の出身の社会経験者で占められているのが特徴で、早い話、ビジネス能力に乏しいアーティストと企業プロジェクトの橋渡しをできる人材を育てようってことらしいわ。
で、入学基準のIELTSスコアが何と7.0よ。そんだけあったら(フツー)ロンドン大学かオックスブリッジに行くだろって思うんだけど、これがもう大人気。今はそういう世の中なのね。
だからね秋山さん、これからの世界に自分の足跡を付けようって言うのなら、アートは好きだが‘創る側’ではなく‘売る側’で活躍できてカネの計算に優れた人材を取り込まないと。そのためにはまず合コンに目いっぱい参加しないとね。
(カネが絡んだ話となると俄然饒舌になってしまうユニコン視察団なのであった)
「はい、地味にがんばります。ありがたいことに、セントマ時代のチューターがとても優しい人で、卒業後も色々な人に私の作品を見せてくれていて今でもメールが届くんです。それはとても助かっています。あと、絵本を描いてって頼まれているので、そういうこともやっていきたいなーと思っています。
次回は小さくても作品を出して、ま、こっからですかね」
だめよ、地味一筋じゃ。ユニコンのHPも利用してくださいね。
おーっと。この展示会は貴子さんの友人の平山真澄さんとの合同展示会であった
(ごめんね、平山さん)。
平山さんはキャンバーウェルのファウンデーション修了後、チェルシーカレッジの学部課程(ファインアート)に進み、秋山さんと同時期に卒業しました。
当日のカフェレストランでお会いすることはできなかったけれど、後日、例の「プラント」作品についてのコメントを送っていただきました↓
「私は自然・人・人工物が現代社会の中でどの様に共存しているかという事に興味があります。イギリスから帰った後、東京の街に敷き詰めてある植木鉢に眼が留まる様になりました。切り取られた一部の自然が人工物と共存する事を知る事によって自分の興味を深めていけそう…と思ったことからこの作品づくりが始まりました。
今回の展示ではひたすら描いた植木鉢達を展示しましたが、この経験とアイデアを更に育てていきたいと思っています。
異国での生活と勉強は大変だったけれどかけがえのない経験をしたと思います。
大学の授業では週1回のクラスやレクチャーと選択授業を受けながら自分の興味の向く方向にどんどん挑戦していける自由な時間と空間がありました(その分、時間の自己管理を求められたけれど)。
チェルシーには哲学・理論を学びながらディスカッションを通してお互いを高めていくという独自の方針があります。興味や関心がある事に対して「それはなぜ?」と問いかけつつ、そのアイデアを更に進展させて行くという校風です。
私はそれまでは興味や関心があっても「なんとなく」で終わらせてしまい、考え抜くという習慣がありませんでした。それがチェルシー時代を通して多少なりとも習慣づけられたように思います。
(物理的には)あまり作品は残せませんでしたが、自分の興味の的が何なのか、どんな形の制作プロセスに心惹かれるのかということを知ることができました(日々変わる部分もありますが)。それが卒業後の今、とても役立っています」
以下、記事の内容です。
*****************************************
英国留学体験記
■英国留学を決断した理由
父が英国に関わる仕事をしており、進路に悩んでいた高校3年生のときに父といっしょに英国を訪れました。
そのときに出会った英国人や滞在している留学生の熱意と真摯さに憧れ、英国留学を決断しました。
■情報収集や留学の準備
高校卒業後より1年間、シェアハウスで外国人といっしょに暮らし、日常会話程度の英語が身につきました。
その後、語学留学3ヶ月、ファウンデーションへ行くためのコースへ3ヶ月、ファウンデーションからロンドン芸術大学の学部と進学しました。
留学費用は埼玉県から「埼玉発世界行き・奨学金支給制度」の学位取得コース奨学生として、2011年から毎年奨学金をいただいています。
■学業生活について
英国のアート教育は技術重視ではなく、「いかにクリエイティブなアイディアを生み出せるか」という点に重きをおいています。
ある課題で、バラバラの3つの単語を複合させた作品をつくるというものが出されました。私にはSuture(縫合)、Overturn(反転)、Isolation(孤立)という単語が与えられ、最終的にゴム手袋の先端を切り落とし、指の部分にバナナの皮を縫い合わせ、吊るした立体作品を制作しました。
これは基本的な授業ですが、いかに自分の周りを見渡し、どう理解を深めて発想を得るかという発想力を高める良い授業でした。
■英国留学で得たこと
留学前の私は、消極的な芯のない人間だったと思います。
しかし、この国では自己主張をしなければ生きていけません。
たとえば批評をする際は、なぜ私はこれをつくったのか、だれに何を伝えたいのかというプロセスを、英語で論理的に伝えなければなりません。私は留学をしてから、改めて「私は何がしたいのか」ということを深く考えるようになりました。
目標や強い意志をもって行動できるようになり、性格に変化があったと思います。私にとって、この変化は大事なことだと感じています。
髙橋みなみさん
【留学した都市】 London
【留学した学校】 University of the Arts London, Central Saint Martins
【コース】 BA Fine Art
【留学期間】 2011年6月~現在も留学中
【留学準備の開始時期】 留学の12ヶ月前
【渡英直前の英語力】 IELTS 5.5
【滞在方法】 フラットシェア
*****************************************
髙橋さんが「埼玉発世界行き」奨学金をゲットしたことは以前にも紹介しています。
http://www.unicon-tokyo.com/interview/archives/2011/09/file13_1.html
もっと作品が観たい方は髙橋さんのTumblrをチェック!
http://minamitakahashi.tumblr.com (フォローしてね♡)
]]>
以下、記事の内容です。
*****************************************
長年の夢を果たした留学で目標達成を目指す
「外資系企業でPRとして10年以上働いていいたので、英語はできる方だったのかもしれません。でも、外国人の上司に対して、理論的に物事を説明できない自分がいて・・・。英語力だけでなく、彼らを納得させるだけのコミュニケーション能力を手に入れたいと思っていました。また、短大卒業だということで思い通りの就職活動ができなかったこともあり、どこかで学歴に対してコンプレックスをもっていたのかもしれません。」
そう語るのは、プラチナ・ギルド・インターナショナルにてPRマネージャーを務める十鳥由比さん。彼女を留学に踏み切らせたのは、世界的な金融不安をもたらしたリーマンショックだった。
「急激に高級品が売れなくなって、大幅に予算もカットされたんです。こんな金額で何ができるんだろうと・・・。今なら退職金も出るし、夢だった留学をしようと決意しました。当初は語学留学を考えていましたが、コンサルタントに大学院留学をすすめられ、シティ・ユニバーシティ・ロンドンのアートマネージメントコースを受験することに。希望コースに入学するためには、英語検定で高いスコアを取ることが求められました。そのため、9月からの大学院の前に、4月に渡英して受験準備コースで学ぶことに。普通よりは英語ができると思っていたけど、なかなか思い通りに求められるスコアに達しなくて・・・。必死に勉強しました。自分のお金で留学したから、1円も無駄にできなかったし、ここで頑張って大学院に入学して、今までにはない経験が得られるという思いが強かったです。」
猛勉強の成果もあり、晴れて希望コースへ入学。アートマネージメントを選択したのには理由が。
「仕事柄、アーティストやクリエーターと接することが多いです。不況のなか、企業が彼らをサポートするすべがないかを大学院で学びたかったんです。」
そして帰国後の現在は再びPRの仕事に復帰。
「語学力のアップはもちろんですが、留学して一番良かったことは、論理的に物事を考えるクセがついたことですね。考えるよりまず行動していたことが、冷静に分析してから着手するようになりました。プレゼン能力も、確実に上がったと実感しています。大学院のコースやインターンシップなど、現地で得た人脈も、留学したからこそ手に入れられた財産です。」
得たものが多かった留学。でもそれはゴールではなく、目的を達成するための通過点だと考えているそう。
「留学前から考えていた、企業がクリエーターのサポートをどうすべきかを模索中です。今はネットワークの再構築と現状把握にいそしんでいるところです。」
*****************************************
十鳥さんはロンドン留学中にも英国ダンスカンパニーにコミュニケーション・マネジャーとして務めていました。
その時の体験談はこちらです。
髙橋さんは埼玉県がグローバル人材を育成するために設置された「埼玉発世界行き」奨学金を授与されたことも以前紹介しています。
http://www.unicon-tokyo.com/interview/archives/2011/09/file13_1.html
以下、記事の内容です。
*****************************************
いま、社会で生きる力とは--
実社会で働き生きていくためには、どのような力が必要とされるのか。就職活動や高等教育の現場で若者支援に携わる2人と、自らのフィールドを見つけ、将来に向かって学び活動する若者2人に話を聞きました。
ロンドンでアート教育を受ける
ロンドン芸術大学大学生
髙橋 みなみ
埼玉県立高校を卒業後、キッザニア東京でのアルバイトを経て、埼玉県の海外留学奨学生第一期として渡英。University of the Arts London Central Saint Martins College of Art and Designの現代アートコースに在学中。1990年埼玉県生まれ。
“大切なのは、行動力と決断力
行動しないと何も実現しない”
小さな頃から漫画やイラストが好きで、中学・高校では美術部に所属していた髙橋みなみさん。進路を考えていた高校3年生のとき、父親の仕事の関係でロンドン芸大を訪問。現地学生の熱意に触れ留学を決意します。
卒業後は英語力を鍛えるため、英語研修があったキッザニアでアルバイトをしながら、外国人とシェアハウスで暮らしました。
英国のアート教育は、技術ではなく課題やプロジェクトに取り組みながら、発想力を養う授業が中心です。例えば出されるのは、「手を使わないで描けるドローイング・マシンを作れ」という課題。髙橋さんはペンキを付けたスポンジをサンダルに貼り、顔に固定してスタンプのように紙に押し付けるというプレゼンテーションをしたそうです。
現地の学生と学ぶなかでディベート力が鍛えられました。視野が広がり行動力も付いたそう。将来は起業も視野に入れ、日本の文化をアートで世界に伝える仕事をしたいと考えています。
中学生の時に独学でCG制作もしていたという髙橋さんは、「技術は夢や目標に向かっていく過程で身に付いていくもの」と言います。現地で制作経験を積むため、現在、アーティストの村上隆さんのもとでアルバイトもしています。
*****************************************
ロンドンのアート教育に揉まれながらも、将来のヴィジョンをしっかり持ち実行している髙橋さん。
た、たのもしぃ~!!!!!!
ユニコンは成長過程を見守る親戚のおばさんの心境で、髙橋さんの姿にウルっときてしまいます。
髙橋さんの夢の実現を、ユニコンも陰ながらオーエンしています。
2011年1月にセント・マーチンズ(CSM)オリエンテーション・コースを受講し、9月からのファウンデーション・コース進学への切符を手にした髙橋みなみさんが、埼玉県がグローバル人材を育成するために設置された「埼玉発世界行き」奨学金を授与されることとなりました。
実は奨学金への申込前に、「Foundationのような学部でもないコースで申し込んでもいいものだろうか…。IELTSのスコアが7.0とか8.0とか持っていなくても大丈夫なのだろうか…」とユニコンに相談してきていた髙橋さん。
その時は「とりあえず申し込んでみよう!」と(結構アバウトな)アドバイスをしたユニコンでした。
そして、その数ヶ月後。
髙橋さんから、見事奨学金の内定通知をもらえたとの報告がありました!
埼玉県人には、とっても有益な情報満載の、髙橋さんからの報告をここにご紹介します。
お久しぶりです、CSMファンデ9月入学予定の髙橋です。
実は前に相談させて頂いた奨学金の内定通知が来ました・・・!
埼玉県からの付与になりますので同時に埼玉県の親善大使にも任命されるようです・・・笑
ロンドンの状況とかを色々レポートしなければならないみたいです。がんばります。
背中を押してくださってありがとうございました!
そして、そのまた1ヶ月後、今後は奨学生を対象とした壮行会の様子をレポートしてくれました。この様子は テレビ埼玉や毎日新聞でも報道されたそうです。
以前埼玉県から奨学金の奨学生・埼玉県親善大使として任命されたことはご報告させて頂いたのですが、先日奨学生を対象とした壮行会が埼玉県で開催され、4年間就学の学位コース代表として僭越ながら壇上で挨拶をさせて頂きました。いっぱいロンドン芸大アピールしてきました!
そして先日、8月6日の埼玉新聞に名前と学校と少しのインタビューが掲載されましたのでご報告します。
(壮行会には、たまたま同じロンドン芸大のLondon College of Communicationの学生も居らっしゃいました。音楽系の留学生もかなり採用されていたようなのでこの奨学金はもしかすると芸術系にとってはかなりお勧めかもしれません。)
2011年8月6日 埼玉新聞
埼玉県からの奨学金になりますので県知事や県の教育委員長、出資をして下さった各位銀行の偉い方などがいらっしゃり、参加者は私を含め学位を取得する対象の奨学生が10名ほど、大学と提携された1年未満の留学をする大学生が150人ほど、高校生を対象にした高校生留学の方が30人ほど参加されていたようです。
県の偉い方からも埼玉県に関する作品を作ったら連絡下さいと念を押されてしまったので、何らかの形で提出できればいいのですが・・・笑
親善大使としては任意ですが上記のように作品やレポートを埼玉県に送付すれば埼玉県のWEBサイトなどで発表の場を設けてくれるそうです。
結構な金額を出資して貰っているため責任重大です・・・いいプレッシャーになるといいです。
奨学金をただもらうだけではなく、もらった分だけ人より多く功績を上げられれば!と意気込みをみせる髙橋さん。
地元を背負った髙橋さんのCSMでの頑張りに期待しています!
髙橋さんが授与された奨学金はこちら:
「埼玉発世界行き」奨学金www.pref.saitama.lg.jp/site/global/globalscholarship.html
髙橋さんのTwitterID:pepper_ham_stk
(アート関係者からのフォローをお待ちしています!)
2010年秋からCSM MA Fine Artコースで学んでいる岩本吉隆さんが、UALで彫刻を専攻する大学院生を対象にした奨学金The Cecil Lewis Sculpture Scholarshipsを授与されました。
実は岩本さんはロータリー財団からの奨学金ももらっている“チョー”優秀な学生で、赤字が普通の留学財政も彼に限っては大黒字。これは大変めずらしいケースです。本人もウキウキで、この報告に来てくれた日は「こうなれば他の奨学金にも申し込む」と鼻息荒く決意を新たにしていました(だんだん留学の目的がずれてきている?)。
「エーッでもさ、それってあなた奨学金のダブル取りじゃん。ロータリーにお金返さなきゃいけなくなるんじゃないの?」というユニコンの質問に、「へっへっへ、いいんですよ。これでも僕、ロータリーのお世話役の方に一応正直に報告しました。そしたら向こうも“うーん、まあこれは君の作品への“賞金”という捉え方でいこうじゃないか。私たちからのお金は“奨学金”だから種類の違うものだし、そのまま持ってていいよ”って言ってくれたんですよ」って・・・なんという太っ腹!
ちなみに今回もらった二つ目の奨学金の使い道は?「親に返しましたよ、これまでいろいろ出してもらってたんで」って、岩本くん、君はエライ。普通はそこでまっすぐ隠し財産行きだよと言うと「いや、ボクも実は“しまったな、黙ってりゃよかった”って思ってんですけどねーはっはは」ってやっぱり?いやいやわかってるわ、それはあなた流の照れ隠しで本当は親孝行者なのよね。もちろんこの裏話は公開せずに黙っておくわ。留学話に必要なのはやっぱり美談よね。
さて、ここで岩本くんの持ってきてくれた奨学金授与式の様子や奨学金応募時の作品の写真をお見せしながら、本人の感想を聞きましょう。
(向かって左が奨学金提供者であるCecil Lewis氏の娘さん、右3人が今回の彫刻奨学生。)
当日は和やかな雰囲気で、「絵を見ながらお酒を飲んで、奨学金提供者とお話をして、ついでに他の奨学生とも友達になって情報交換しよう」という感じでした。
(別の奨学金をもらった陶芸学科の学生と。)
今回の奨学金には大学が始まってすぐに出願して、決定の知らせを受けたのが10月、レセプション(イベント)が11月末に開催されました。もともとはUALから「こういう奨学金があるからよかったら申し込んだら?」みたいなメールが来たので「んじゃ、試しに」って感じで出してみたら受かっちゃった、という感じでした。
石の作品をやってると言うと古い古い(Old Fashioned)とこちら(イギリス)では言われますけど、僕はそんなことはないと思います。だって、実際にはそう言いながらも僕のことを入学させてくれたし、入ったら入ったで石をやってる人間はめずらしいのでおもしろいと言ってくれる。そこで今回の奨学金応募時のStatementには、僕が気付いたこととして「“これこれの素材をやっているから古い”ということじゃなくて、そこにどういう現代性、コンセプトを表現できるかということが問題であって、それができさえすれば素材の古さというのは関係ないのではないか」ということを書きました。
また「なんでお金が必要なのか、どういうふうに使うのかを書け」といわれたので、「僕は石をずっとやってるので、設備費も経費もかかる。そして材料費もかかる。だからお金ほしい」と単刀直入に書きました(笑)。
ただ、彫刻の奨学金とはいっても別に必ず彫刻を作れってわけではなく、何を制作してもいいという太っ腹な奨学金です。実際、今回の奨学生3人とも現時点では彫刻を作ってないんですよ。なので「おれたち彫刻の奨学金もらってんのにみんな絵かいてて、全然彫刻やってないよねーっ」と冗談言い合ってます。
ボクはMAに出願する前にCSMのオリエンテーション・コースをやったのですが、これがかなり効いたと思います。僕は日本で大学院まで出ているので、基本的にアート初心者向けコースであるオリエンでは、そりゃ技術的なことは「今更これやらなくてもいーんだけど」的なことももちろんありました。でも、そういうことでない、もっとイギリスの美大で勉強するにあたっての根本的なキーポイントを学べたと思うのです。
日本にいる時からオリエンを経てMAに出願する前までの間に何人かにポートフォリオを見せましたが、日本で会ったコリン先生(UALの国際部職員で、自身も現役の彫刻家)は褒めてくれたけど、別の何人かの教授にはけなされたりして。同じものを見せてるのになんでこうも反応が違うのかなって思ってたんです。
それでこちらでオリエンをやって、英語学校に通ってIELTSを伸ばして、PAEPに参加してコースが始まって・・・といろんな段階を経て今回の奨学金受賞までこぎつけたわけですが。そういうプロセスを全部振り返って今考えれば、僕が作品を見せた当時けなした人たちも、あのとき既に僕がこちら流のコンセプトに則ってきっちりした英語で(アカデミックな美術評論家が使うような専門用語をちりばめつつ)プレゼンをできていれば理解してくれたんじゃないかな、と。やはり結局は英語力が一番大事っていうか。そういうことを痛感しています。要は作品がいいことはもちろんですけど、ある意味それより大事なのが「見せ方の問題」ってことですよね。
日本人はコンセプトについて考えないし、説明できないし、うまく見せられないし。技術的にはみんなとてもうまいのに、それを英語で表現したりきれいにポートフォリオにしてうまくプレゼンする力がないんです。そういう授業自体が日本にはあまりないから。そして英語もできないし。なので、そういうところで損をしているのかなと思います。何といってもモノを言うのは英語力なんですよ。
ちなみに、これが今回僕が奨学金用に提出したポートフォリオの一部です。
筑波での大学院生時代の作品。 これは白金台でグループ展をやったときの展示風景です。 タイトルは「スプリンター(破片)」。月の表面を切ったようなイメージの作品にした。 |
|
上記写真真ん中に見える作品 |
|
絵画作品。 Sculpture Awardとは言っても、あくまでメインが彫刻であれば絵の作品も提出可。なので、「こういう絵で表現したコンセプトを彫刻として表現してみたい」という書き方をすれば全く問題なしです。 |
今回の奨学金に関しては、生まれて初めて“Award”というものをもらったので感無量でした。これでやっと履歴書に書けるものができたっていうか。この奨学金はHomeとInternationalに部門がわかれていて、Internationalの候補生選出にあたっては「英国にないおもしろいもの」を探していると思います。なので、日本人として日本でやってきた作品を見せたということは絶対に大きかったと思います。日本でやっていることは、ロンドンの人から見るとめずらしいことも多いと思うんですよ。それを「英語の文脈」にちゃんと変えてプレゼンして見せることができれば何の問題もないのではないか、と思いました。「日本でやってることをこっちに持ってきて、こちら流の提示のしかたをする」ということです。それができれば絶対におもしろいと思ってもらえると思います。こういうことを日本の学生にももっと知ってもらって、もっと後続が出て欲しいですね。
な、なんと頼もしい。これからも奨学金ハンターとして、いや奨学金が向こうから追いかけてくるような一人前のアーティストとして、羽ばたいていただきたいわ。ユニコンも陰ながらオーエンしてます。
岩本さんが授与された奨学金はこちら:http://www.arts.ac.uk/lewis-scholarship-pg.htm
岩本さんのサイトはこちら:http://yoshi-iwamoto.com/index.html
]]>ロンドンの邦人コミュニティ・ペーパーの草分けである英国ニュースダイジェストに、シティ大学のMA Culture, Policy and Managementコースに在籍中の十鳥由比さんが紹介されました。
彼女がコミュニケーション・マネジャーを務めるAkram Khan Companyは、バングラデシュ系英国人の振付家Akram Khan率いる、いまロンドンで最も注目されているコンテンポラリー・ダンス・カンパニーです。ある日の大学での講義にゲスト講師として訪れたカンパニー社長の話に惹かれ、由比さんいわく「(ユニコンの)社長のアドバイスに素直に従って」インターンに取ってくれと飛び込み直談判しに行ったのが縁で始めたのが今のお仕事。「売る対象がモノからヒトに変わっただけ。仕事の基本は同じですから前職での経験を活かせています。私はインターン先が必要だったし、カンパニーのほうもちょうどPRの経験者を求めていたので、需要と供給がぴったりマッチしたってことですね。」と頼もしさ満点。記事では「ロンドンのレストラン・バートップ3」ということで由比さんセレクトのお店が紹介されていますが、登場するのが単なるお気に入りの店ではなく、その「プロの視点」から選ばれているところがさすがです。
Akram Khan Companyの最新作公演がちょうど来週、2010年7月20日(火)~24日(土)ロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場にて行われます。今度の公演はKhanとインド系英国人の現代音楽家Nitin Sawhneyとのコラボレーション作品です。ダンスや音楽に興味のある方、ぜひ足を運んでください。
]]>ユニコン学生数多しといえど、これまで選ばれた人のいなかった「全額奨学生」に、ChelseaでMA Fine Artを専攻するKさんが抜擢されました(2008年北京オリンピック男子陸上400メートルリレーで銅メダルを獲得したアンカーランナー朝原宣治さんに似ていることから、ユニコン内では「アート界の朝原くん」と呼ばれている。本人が極度の照れ屋のため、実名は今回伏せておきます)。それを記念して、というわけではありませんが、どうしてイギリスで勉強することになったのか、これまでどんな経験をしてきたのか、将来の展望について、など、諸々のお話をしてもらいました。
****************************************
もともと外国には行きたかったんです。親の刷り込みでしょうか、両親が若いときから美術関係の仕事をしているのと二人とも外国旅行が好きだったので、子供のときから夏休みはほとんど海外で過ごしていました。・・・といえば聞こえはいいようですが、安いレンタカーで安宿を点々とし、ほぼ毎日自家製ハムサンド食べて家族4人で毎年ヨーロッパ各地の美術館を回る、という結構ハードコアな1ヶ月で。今、大人になって聞けばこそ贅沢な気がしますが、そのときはとにかくお腹が痛くなるくらい嫌で嫌でしょうがなかったです。飛行機も凄い嫌いだったし。それにみんなは家でごろごろしたりプールに行ったりしてるのに、僕だけ全く違うことをしていて、夏休み後の話題が全然友達と違うんです。だから、毎年休みの後は学校に馴染むのがすごく大変でした。だからこのから芸術家ッてやな人達だなッて思ってました。でも不思議に自然と「海外には出るものだ」という思考回路が培われたのも事実です。考えてみれば、日本の近代教育は西洋のものにもとづいていますしね。もちろん、子供の頃にそんなことまで考えていたわけではありませんが。
だから矛盾するようですが、進路に美術を選んだことについても、「そうするもんだ」と思っていました。アートに進むのが普通、みたいになってて、それに対して特に深くは疑問を持たなかった、というのが正直なところというか。たださしてアーティスト志望だった訳でもなかったので高校の夏期講習で美術予備校に行ったら、ものすごいカルチャーショックで泣きましたけどね(笑)。「女の子が坊主だよ」「ベルボトムだよ!」「ハンチングだよ!!」「何だ、この人達!!!」みたいな。で、まあその流れで美大に行くことになって。とはいっても、美大に入るまでに2浪して、そのときはまた泣きましたね。「自分、できないじゃん」と気づいたんですよ。それまでは、ちょっと絵を描いてもK君はうまいねー、すごい、といわれていたのが、「あー俺って最底辺なんだなー」と。ただ親の反対とかはまるで無く、ホントにすげー支えてくれて。ソレは凄く有り難かったなーと思います。それで、なんとか学校に合格出来たのですが、大学時代は学校にはろくに行かずに本当にブラブラしていました。コレについては凄い反省と後悔しています。今,イギリスで勉強していて良く思うのは日本の大学の設備やシステムは,とても恵まれています。ソレはコチラの学校では絶対に手に入らない物ですし、とても恵まれた環境にあると思います。ソレを僕は愚かにも棒に振ってしまった訳ですから‥。その上,内部生はほとんど落ちる筈のない自分の通っていた大学の大学院にも最終的には入れてもらえず‥。ソレで今、一からやり直している訳なのですが‥。
ただまあ僕の言訳としては、小さい頃からなんとなくアーティストだ芸術家だって言っても小さなコミュニティー作って、縦社会の中でやっていて本来自分たちが否定していた筈の生き方をしているんじゃないかなと感じてしまって‥。まあ、こっち(英国)に来てそれは多かれ少なかれどこも一緒だと悟ったんですけどね。ただ、そのときはそんなこと分かるわけがないので、とにかく日本の美術界って矛盾だらけなのかもなと、感じていました。ソンでソレを良い訳に,学校も行かずブラブラしてました。
それで、まあとにかく大学を出てしばらくフリーターをして中途半端な僕は現実から逃げたかったのもあり、その後何故かパリに行きました。パリを選んだ理由としては、一番苦手そうな土地に住んでみようと言う事で、おしゃれなイメージのあるパリに行って見る事に決めました。おしゃれッて苦手なんです。デモパリッて思っていたのと全然違って凄く良い所で。自分の思っていたようなおしゃれな街では良い意味でなかったし。ただ最初は凄く大変でした‥。それまで英語すらまともに喋れなかったからホント二ヶ月くらいアーウーとかウーアーしか言ってなかったです。それでもちんぷんかんながらもフランスで語学を勉強しているうちに、理論やら文法やら、「勉強するのって凄いおもしろいな」と思ったんです。それではじめは半年いるつもりで行ったのが、家賃2万円(風呂なし、階段8階、トイレ共同)の部屋にすんでいたおかげで生活費も安くすんだのもあって、ソレと何より途中から、祖父の後押しも得られて結局しばらく滞在出来ることになりました。ソレで油絵とかも描き始めて。ホントに僕は大学時代は真剣に学校に行かなかったし、そういう意味ではフランスが転機でした。
ただフランス帰国後の就職活動は本当にへこみました。またもや「実は自分、何もできないんだな」と気づいた時期でした。今度は美術のスキルとか言う問題ではなく、現実的に役立たずと言う事が突きつけられた時期でした。とにかくなんでもやって、それはそれで意味がありましたが、とにかく大変でした。そんな中、家族の影響が非常に大きいと思うのですが、小学校の先生と言う仕事に就けたらいいなと思い始めました。理由としては、自分はいやいやながらも子供の頃から物を作る人や美術品に囲まれて育ったおかげで,いわゆるアートッて物に対してニュートラルでいれると思うんです。そしてその感覚が今の自分にものすごく大きな影響を良い意味でも悪い意味でも与えていると思うんです。なんか今ッてイギリス人も日本人も結構,いろんな事に構えてる気がするんです。例えばアートとかアーティストッて言葉に。だからそう言う偏見とか抜きで,子供に作る環境や見る環境が日本にもあったらなーと思って。それとフランス語をやったときに語学のおもしろさに目覚めたこともあり、卒業後はインターナショナルスクールで美術を教えることが現在の目標です。英語を使いながら子供達と接っせたら良いなあと思うし。ただ今の語学力では全く自信がないのでまた勉強しないといけないのですが‥。英語はホントに大変なので皆さん頑張って下さい。
とにかく教師になったとして一番取り組んでいきたいと思うのが、僕も良くわかった気になってしまいがちなのですが、知る事と理解する事は違うんじゃないかなと言う事をミンナで考えれたらなーと思います。ソレが結局,偏見や勘違いを産むんだと思うし。一番初めにそういうことについて考えたのはフランスにいたときでした。フランスの本当にいいところは、前にも述べたように日本人の知ってる「フランスのいいとこ」じゃないじゃん、「みんなが知ってること」って嘘じゃん、と感じたんです。日本は島国だからなかなか他所の国に行くのが難しいとは思うんです。だから結構情報に頼ってしまうと思うんですけど、結局情報ッて誰かのフィルターを既に通しているので、ソレがミンナに取っての真実かどうかはわからないと思うんです。いろいろな情報に頼ってしまう事によって今でも西洋に対して誇大妄想持ちやすいと思うんです。例えばこれはホントにあくまで僕個人の主観ですが、僕のみている限り他の国(イギリス人も含め)の学生も日本人と良くも悪くも人間としては基本的には変わんないと思います。別にイギリス人だからッて皆が皆、絵が上手い訳でもないし、面白い物を造る訳でもない。そして僕のように日本から来る学生さんには、日本の勉強をもう一回自分なり見直せたら良いのではないかと思うんです。例えば日本の教育では入試のためにデッサンばっかりやらされて、などと言うけど、デッサンの良い所は絵が巧くなるとかではないんだと思うんです。めんどくさいデッサンをする事によって客観性と忍耐力が養われる事が一番大事だと思うんです。ちなみにホント僕が言うのもおこがましいんですが,客観性と忍耐力ッて日本人の美徳だと思うんですよね。しかもデッサンッて凄い地味だけどホントいろんな物が見えてくるんですけどね。ただ僕はそう言う所がすごい古くさいんで,今時はやんないのはわかってるんですけど‥ごめんなさい。
ちなみにコースは凄く楽しいです。チェルシーは立体をやる人には嬉しい事にかなりワークショップが充実してます。これはロンドンの大学の中でも屈指だと思います。スタッフもミンナ凄く親切だし。アーとかウーとかしか言わない僕にも色々手取り足取り教えてくれるし。ただ正直、自分としてはFine Artってそんなに価値あんのかな?自分の人生に・・・なんて思ってる部分が今でもあって、勉強は楽しいけれど特に去年はすごく不安でした。物を造る事は凄く好きなんです。ただこれからMAを卒業して、院卒って肩書きを持ったところで何の意味もないじゃないかなとタマに思います。マア僕の場合基本的にウジウジした性格なので今は,ここまで来たのだし出来るだけポジティブで行こうと今は心がけています。
それになにより、こうして奨学金をいただけて、学費も生活費も何ら心配することなく伸び伸びと一年勉強できるというのはうれしいことです。後、なにより僕みたいのでも人に認めて貰えたと言う事は、単純に凄く嬉しいし有り難いなあと思います。生きてて良かったなーみたいな。とにかくほんと感謝です。それとPost Graduateコースにいる間に現代アートの知識が少しつきました。それまではほんと現代アートと言う物に関してはほとんど無知だったのですが、やはりそのあたりの分野にはこの1年でちょっとは詳しくなりました。それにやってみると意外と面白かったです。ただ周りの学生はホントに色々良く知っているので,今でも良く恥ずかしい思いもします。とにかくMAを出たら、次はインターナショナルスクールの教師資格が次の目標です。それがなんとか取れたら、先生になるべく就職活動してみようと思っています。
****************************************
さすが奨学生、というべきか、独自の視点を持ってこれまでのことやこれからのヴィジョンを語ってくれたKさんのお話に、「ほぉ~~、なるほど」の連続でした。彼が先生になって子供たちの教育をする、その日が遠からず来ることが本当に楽しみです。こういう先生に美術を教わることになる子供たちは幸運ですね。その教え子からも、また世界に羽ばたくようなアーティストなりデザイナーなり先生なりが出るのでは?と、これからの美術教育に思わず期待が高まったインタビューでした。
昨秋2008年11月にChelsea College Of Art and Design(Chelsea、チェルシー・カレッジ)MA Graphic Design Communicationを卒業した川崎智子さんの製作した本がチェルシー・カレッジの図書館に貯蔵されました。
「本当に楽しかったんですよ、私。11ヶ月ほんとに充実してあっという間でした。」といって卒業の報告にきてくれた川崎さんに、作品のこと、コースのこと、ロンドンでの留学生活のことを聞きました。
日本の芸術大学を卒業後、「英語が話せるようになりたいし、ヨーロッパには好きなアーティストがたくさんいるから」と留学を決意した川崎さん。もともとはユニコン東京事務所での面接でセント・マーチンズ(CSM)ファウンデーションの入学許可をもらって渡英しましたが、渡英後紆余曲折を経て、結局ファウンデーションではなく同じCSMのGraphic Portfolioコースへ進学しました。1タームGraphic Portfolioを受講したあとは、「せっかく日本で大学出てきたし、こうなったら大学院に行きたい」という気持ちが高まり、そのためにまず英語をきっちり勉強することにしてロンドンの英語学校へ入学しなおしました。また、同時期に花屋さんでのバイトを始め、これを会話の練習や友人作り、英国人・ヨーロッパ人の花の好みや色彩感覚などを学ぶことに役立てました。お店で使うクリスマスやバレンタイン用のグラフィック・デザインを担当させてもらうなどバイトを作品作りにも活かして大学院に出願、合格して晴れてチェルシーに入学したのは2007年秋でした。
「コースは17人、いろんな国からいろんなバックグラウンドの人が来てました。もともと経済学者だった人、他分野のデザイナー経験者、ライター出身の人など、グラフィックだけに限らない背景の人が集まってとても刺激的でした。チューターたちも、若いのにとってもセンスがいい30代の金髪女性コース・ダイレクターのほかに、彼女のRCA(英国王立美術院)時代の仲間が3人ついて、常に一つに限定されないコメントやアドバイスを得ることができました。また、この先生たちのコネが広いので、“こういう人が好き”とデザイナーやアーティストの名前を挙げると、“あぁ、じゃあ次のレクチャーに呼んであげるわね”と軽~く言って彼らをゲストとして呼んでくれる、なんてこともたくさんありました。その他にも、有名アーティストによる一日ワークショップも4回あったし、こんなにいろんな人に来てもらっていいの?!と思うくらいたくさんのアーティストやデザイナーから刺激を受けることができました。」
「チェルシーでは横のつながりも強くて、一度、私たち(グラフィック)とインテリアとキュレーションの3コースの大学院生たちが合同で架空のエキシビションをデザインする、というプロジェクトもありました。各チーム6~7人でやったんですけど、これは「もうコラボってやりたくないカモ・・・」と思うくらい大変でした(笑)。でも、実際に働き始めたらこういうことをするんだ、というのが体験できてよかったと思います。」
「英語が弱いこともあって、はじめのうち先生は私が何をやりたいのかわかってくれてなかったみたいだけど、最後のほうではかなり理解を示して褒めてくれるようになりました。最後に製作した“毎日の笑いの本”『Laughter in Everyday Situations』はコース・ダイレクターに気に入られて、チェルシーの図書館に貯蔵されました。」
「ショーは9月と11月の2回やりました。9月はwork in progress showといって途中発表のようなもの、11月はprofessional showといういわゆる卒展です。9月のときには、一人一枚ずつ三メートルのバナー(自分の名前や作品の説明などをわかりやすく記載したもの)をデザインして、そのほか今時分たちが作っているものを途中展示しました。私の場合は“笑い”について研究していたので、バナーには心理学の本の中でみつけたフレーズの引用なども加えました。そして、その隣に自分が面白いと思った毎日の情景を心理学の理論に基づき区別わけしてスライド・ショーにしてみました。その理論のなかのひとつ「“繰り返す“ものは笑える」を使って、Repetitive Chair(繰り返しの椅子)を作って、それと一緒に人間のサイズなどを遊んでみました。さらに、このRepetitive Chairの上には、みんなに繰り返しのアイデアをよく理解してもらえるようにロシアンドールを置きました。」
「9月のショーが終わると論文の締め切りがあり、そのあとすぐ11月にprofessional show(卒展)がありました。9月のショーで毎日の笑いのスライド・ショーが好評だったので、それにエッセイを加えてA3サイズの本にしました。これがさっきお話した毎日の笑いの本『Laughter in Everyday Situations』です。あと、毎日の笑いから得たものをヒントに、いろいろな家具を道で拾ったものを使って作りました。このプロジェクトには、London Object Trouveという名前をつけました。これも一冊の本にまとめて展示しました。この写真で、手前にある家具は“日々の笑い”で得たもので作った家具です。たとえばこの椅子にはInversion Chairという名前をつけました。これは「逆さになっているものは笑える」という心理学の法則に従って作ったものです。コーヒーテーブルの上に置いてあるのがLondon Object Trouveの本です。」
川崎さんの作品の写真を見て、思わず「くすっ」と笑った方も多いのではないでしょうか?かくいう私もその一人で、「なるほど、これが“笑いの研究”か!」と膝をたたきました。川崎さんから「こういうものを作ってる」という話だけを聞いていた製作過程当時は「そうか。ウーン、わかるような、わからないような・・・」と漠然と考えていましたが、やはりアート&デザインは「百聞は一見に如かず」、作品を見たらすぐに川崎さんの研究してきたことと製作意図がわかりました。こういう一見なにげなく見える「笑い」について、心理学の本なども使って徹底的にアカデミックなリサーチをし、さらにビジュアルな作品にしたのですからすごいですね。
Dyslexiaというのは、知的能力・学習能力の脳内プロセスに全く異常がないにもかかわらず書かれた文字が読めない、読めても意味が理解できないなど、「“文字”と“意味”単独ではそれぞれ理解できるのに、その二つをつなげることができない」現象のことをいいます。「日本語使用においては現れない」という説もあり、英語圏に留学してはじめてDyslexiaであることが分かる人がいるなど、日本国内ではなじみのない現象ですが、欧米ではひろく一般的に認知されています。とくに英語圏では10人にひとりはDyslexicであるという統計もあるほどで、それゆえ教育の場におけるDyslexia対策もすすんでいます。またDyslexiaの人というのは映像・立体の認識能力が優れているといわれ、工学や芸術分野で優れた才能を発揮する人が多いため、芸術大学の学生間では自然とDyslexiaの割合が高くなります。そのため、ロンドン芸大でも専門のサポート体制が行き届いているのでしょう。
「大学生活はとても充実していて、本当にチェルシーのMAに行ってよかったと思います。」という川崎さんに、留学して変わったところはありますか?と聞くと、「予定をしっかりたてるようになったことと、はっきりものを言うようになったところです。それに、人の作品を見て単に“カワイイ”などの抽象的な意見でなく“ここがいい、悪い”など、冷静に客観的に意見が言えるようになったことですね。」という答えが返ってきました。今後の予定はまだ未定とのことですが、デザイナーとして活躍する川崎さんの姿が今から楽しみです。
<写真解説(上から)>
1. チェルシー図書館に貯蔵された川崎さんの“毎日の笑いの本”『Laughter in Everyday Situations』
2. 本の中身
3. 9月のwork in progress showのときのバナーとスライド・ショー
4. Repetitive Chairとロシアンドール
5. 11月のprofessional showの風景
6~8.Repetitive Chairs
9.“毎日の笑いの本“にも入っている、Repetitive Chairをつくるきっかけになった映像
10.Inversion Chair
ところで照井さん、コースでの一番の泣き所はやはり“英語”だったようです。ブリティッシュ・カウンシル東京の英語コースと、ロンドン芸術大学(UAL)がコース開始前の留学生を対象に行う夏の英語予備校を経てMAをスタートした照井さんですが、それでもクラスメイトとのコミュニケーションには苦労したそうです。大学院課程ともなると、“クラスにたった一人の日本人”という状況も決してめずらしくありません。照井さんの場合には幸いにもあと一人日本人学生がいたそうですが、その彼女はBA(学部課程)から上がってきた人。渡英したての照井さんよりはずっと“現場慣れ”していました。こんな環境のため大学院コースの開始当初は勉強の大変さとストレスでげっそり体重の落ちた照井さんでしたが、それでも奮闘していくうちに同級生たちと互いに刺激しあえる関係を築けるようになりました。「英語に自信があるかって言われたら今でもないですよ、全然。大変で!」と謙遜しながらも大学院を無事に卒業し、英国でデザイナーとして勤務しているのですから、努力が確実に実を結んでいるのに違いありません。「卒業制作提出直前の夏場は今考えると本当に地獄でしたね。6時にインターン先の勤務が終わって、それから夜の11時まで開いているUAL本部ビルの学習スペースに篭ってひたすら作業・・・という毎日でした。週末は別のアルバイトもしていましたし。」と追い込み時期を振り返り、「ずっと走ってきたので、今年の冬は日本に里帰りしてのんびりするつもり」と、やっとリラックスできるという喜びをにじませていました。
「今勤めている会社は、メインの顧客がロンドンの主要美術・博物館という、かなり大きな仕事をしている会社です。なので、そこでもう少しいろいろな経験を積んで実力とハクをつけてから日本に帰って自分のやりたいことを自由にやろうと思っています」と今後の展望を語る照井さん。どのように実現していくのか、今から楽しみです。
AERA English: http://publications.asahi.com/ecs/13.shtml
Lumsden at Small Back Roomホームページ: http://www.ldp.co.uk
<写真解説(上から)>
1.照井さん
2.Final Workの写真
3.学校での作業風景
4.Final Presentationの模様
City University(シティ大学)卒業生の宮川朋与さんが、London Symphony Orchestra (LSO) のマーケティング・コーディネイターとして勤務しています。宮川さんは2003年にWestminster大学の一年間のコースに参加し、翌2004年シティ大学のMA in Arts Managementへ進みました。大学院の勉強のかたわらLSOでインターン活動を続け、シティ卒業と同時に社員として就職。現在就業4年目を終えようとしています。
宮川さんは2002年、東京音楽大学のヴァイオリン科を卒業後、1年半楽器店で弦楽器の販売員をしていました。しかし、クラシック音楽の本場ヨーロッパで音楽マネジメントを勉強したいという夢が捨てきれず留学を決意、退職します。留学先の選択としては、「演奏家としての技術留学だと確かにドイツ、ウィーンなどが人気ですが、マネジメントになると、行く先はニューヨークかロンドンが主流です。ニューヨークという選択肢も考えたのですが、英国は大学院を1年で修了できることと、やはりクラシックの本場はヨーロッパだからということで」最終的にロンドンを選んだそうです。
「留学したい」という希望自体はかなり早い段階から持っていたそうで、きっかけは「中学のときにバングラデシュへ行ったことだった」というめずらしいエピソードの持ち主です。「中学生の時の私は今よりもずっと貧しい国に住んでいる人の事を考えていて、先進国は途上国にどういう援助をすべきかというテーマでNGO主催の作文コンクールに応募したんです。それで入選して、バングラデシュへ2週間旅行に行く機会を得ました。そのときの体験がとても強烈でした。はじめの1週間は首都ダッカへ滞在したのですが、後半は奥地の田舎の村へ行ったんですね。そこで本当にショックを受けて・・・。とにかく、誰もがすごく貧しいんです。今まで、日本でぬくぬくと育って、恵まれた生活をしながら国際援助だ開発だ、って偉そうに言っていたのが、急に現実を突きつけられてガーンと頭を殴られたような感じでした。それで、もっと世界を見なければ、と思うようになったんです。」「でも、その一方で、バングラデシュの人たちはとても幸せそうなんですね。大人も子どももいつもニコニコしているし、言葉がわからない私に一所懸命話しかけてくるし、しきりに自分の食べ物をおすそ分けしようと勧めてくれるおじちゃんがいたりして。で、そのおじちゃんのくれたものを食べてお腹を壊しちゃったりするんですけどね(笑)。でも、そういう意味で彼らはすごく豊かなんです。日本に帰ってくると、ものは溢れているし生活は恵まれているのに、なんだかみんな疲れた顔をしてる・・・というのが印象的でした。とにかく、この狭い世界の中だけに居てはいけないのだ、とこの経験を通して強く意識するようになりました」という宮川さん。高校卒業時、ちらりと「米国の音楽大学へ進学しようかな」とも考えたそうですが、結局東京で音大に進むことになります。
ところで、もとはヴァイオリン奏者を目指して大学に入学した宮川さんでしたが、裏方に転向したことについてこのように語っています。「在学中にコンサートの企画をしたり、オーケストラの事務所でインターンをしたりという経験を通して、演奏家を支える役割にとてもやりがいを感じたこと、また演奏家としての自分の才能の限界を感じ、三流の演奏家になるより一流の演奏家を支える一流の裏方になりたいと思うようになりました。」「私は都立の普通高校に通ったので、まわりに音楽、とくにヴァイオリンをやっている子はほとんどいなかったのですが、音大に入学すると当然周りは皆上手ですよね。練習にしても、一日7時間も8時間も弾いてもまだまだ足りない、ひたすら楽しい!という子がたくさんいる中で、私は”3時間やったから今日はもうおしまい・・・ “みたいな感じで。そうしているうちに、演奏家というよりは彼らを支える仕事のほうに目が向くようになったんです。」
渡英時のコース選択については、「音楽マネジメントのコースと決めていたので、音楽系に強い大学を探しました。City大学とGoldsmiths College、Westminster大学が候補に挙がったのですが、まずはWestminsterで語学の勉強、マネジメントの基礎を勉強しました。音楽といってもここはRockやPopに強いのですが、語学の
コースが充実していたのとインターンも含まれるプログラムだったので“充実した一年間を送れそうだな”、と思って選びました。」
Westminster大学在学中に、City大学へ出願するためユニコンを訪問。まずはIELTSのスコアを上げるようアドバイスされ、IELTS7.0を取得した後出願し、無事に合格しました。「City大学のMA Arts Managementは非常に評判がよく、モジュール内容も自分が学びたいことを網羅していたのと、キャンパスがロンドンのzone1内にあり、バービカンセンターを含む各コンサート・ホール、美術館等へのアクセスがよかったのとでここを第一希望にしました。」「英国ではただやみくもに自分で出願したりコンタクトしても無視されるということが非常に多いのです。なので、City大学も、そのまま自分で申込をしてたらきっと入学できなかったと思います。アドバイスを受けてしかるべき準備をし、ここぞというタイミングでユニコン経由で申込をして本当によかったです。」と謙遜しながら語ってくれた宮川さんですが、「目指した道を全うする」というガッツは人一倍だったようで、それがCity入学から卒業、就職までの流れに大きく働いたことは言うまでもありません。
実は宮川さん、Westminster在学中に始めたLSOでのインターンを、Cityでの大学院時代にも続けていました。このインターン自体も、渡英直後から「絶対にオーケストラで働きたい」と周囲にアピールし続けて得たポストでした。大学院は週に3日の授業とはいえ、残りの日も通常勉強に追われて終わるのがほとんど。ところが、宮川さんはこのうちの3日をインターンに充てていました。「きつかったですね・・・。とにかくずっと働くか勉強かのどちらかしかしていなかったですね。もう絶対にあんなことは無理だしやりたくないですね~!」とさわやかに笑っていましたが、インターンと両立しながら修士論文を仕上げるのは一言では言えない大変さだったようです。それでも、「Cityではクラスメートの国籍が様々で、世界中からいろいろな分野のアートが大好きな人が集まっていました。色々な文化背景が学べるとともに、“アートが好き“という共通項でつながれるのでとても楽しかった」そうです。また、「アート・マネジメントは実学なので、今考えると、インターンしながらというのは逆によかったのかもしれません。インターンで経験したことがそのまま修士論文のテーマにつながったので」とも。
シティの卒業が近づいた頃、ちょうどインターン中のLSOマーケティング部門で急にポジションの空きが出て、社員の募集がかかりました。外部募集と同時に内部応募も可能だったため、宮川さんはこのポジションに応募、採用が決まり社員として就業することになりました。「私はEU圏外の人間なので、普通だったら採用してもらえなかったと思いますが、インターンをしていたおかげで職場の同僚と顔なじみだったこと、マネジャーが私のことを信頼していてくれたこと、日本の学生時代の裏方経験などが重なって採用が決まり、労働許可証を申請してもらえることになりました。チームには即戦力が必要だったし、やはり、こういうのは縁ですからね・・・ラッキーだったと思います。」と振り返る当時から早4年、忙しくも充実の日々を送っています。
「この仕事は、担当コンサートであれば夜も土日も出勤ですし、決して高給でもない、本当に音楽が好きでないとできない仕事です。でも、やはりクラシック音楽が大好きな仲間と協力して仕事のできる喜びは何物にも代えがたいものがあります。」と語る宮川さん。「一流の裏方に・・・と思って渡英してきましたけど、5年が経った今でも未だに一流の裏方とは程遠いんですよネ。でも、がんばります!」と今後への意気込みを見せてくれました。今後の活躍が楽しみな一人です。
宮川さんの勤めるLSOのホームページ
http://lso.co.uk/home/
<写真解説>
1.宮川朋与さん
2.学生時代の寮でのパーティ
3.LSO野外コンサートの様子