bar

2010年03月25日

【コース体験記】Byam Shawファンデ 吉澤彩さん

学校名  :Byam Shaw School (a part of CSM)
コース名:ファウンデーション・コース
ライター : 吉澤彩さん(BA Fine Arts @Wimbledon College)

2010年現在、Wimbledon Collegeで堂々の1年生を張っている吉澤さんがファウンデーション・コース時代を過ごしたのはByam Saw School。アクが強いセントマーチンズ本校の傍らで静かなオーラを発散している同校のコースについて語ってもらいました。

楽しい?大変?どっちだファンデ?
楽しかったが大変だったというべきか、大変だが楽しかったと言うべきか(これが学部に進むと自由な時間をどう使うべきかという逆の悩みが生まれますが)。がっちり決まっているデッドライン(締切)に間に合わせるために常に時間に追われていました。最初の1週間はひたすらドローイング。その後はプロジェクトにかける時間が次第に長めになっていきました。

日本と違うぞ、ドローイング
日本で高校生をしていたとき美大予備校に通っていたけれど、英国式は日本のやり方と違うことばかりです。中でもドローイングは特に全く違うと思います。こっちの方がはるかに自由。下手でも誰にも何にも言われない。たまに日本に帰って友達に会ったときにロンドンの美大に通っていると言うと、「じゃあ絵がうまいんだ」と来るから「いやー、それが全然へたくそで」と答えると「え、なんで?」みたいになっちゃう。絵を描くのがドヘタでも素晴らしい彫刻を作れる人とかいるのに。

レクチャー
水曜日はドローイングで木曜はレクチャー、というふうに時間割は割ときっちり決まっていました。レクチャーは、たとえば彫刻がテーマであれば、古代の建築物やギリシャ彫刻全体を包括する内容がメインで時代の流れの合間に特定のアーティストを織り込むという形で進みました。

4枚エッセィ
そのレクチャーで気になったことを一つ取り上げてエッセイ(レポート)を書くのが決まりでした。4枚にまとめてほかのリサーチと一緒に提出しないといけなかったんですが、私はA4サイズ用紙に大きい字で書いてスペースを稼いでいました。ワード数ではなく「枚数」での指定だったからです。もちろん、やる気のある学生は大きな用紙にびっしり書き込んで頑張っていました。
ファンデで書いたエッセイ本数は、ファンデ終了時の500ワードのものと、レクチャー毎の4枚エッセイだけですが、「書く」ってホントに大変でした。

リサーチ
リサーチって何のことか全然わからなくて初期は特にうろたえました。チューターから「セオリーなんていいから、あなたはフィーリングでやりなさい」とアドバイスされたことからも私の弱点はわかるでしょう。それでも少しずつリサーチとは何かが理解できるようになり良い評価をもらえるようになりました。たとえば、写真を撮り、それを使ってのコラージュやドローイング。簡単なカラーを使ってのペインティング。色々なものをどんどん貼って言葉はチョコッとしか書かない、というのが私のパターンでした。文章については本からの引用をしたりするけれど、結局、やりたいようにやればいいということです。これをわかるのに時間がかかりました。バリバリのアカデミック系のクラスメートは本を読んだり書いたりのリサーチを得意としていました。

リサーチブック
リサーチブックは頭の中を映し出したものだから、考え込むより先に紙の上で試すことが大事です。落書きでもペイントでもコラージュでもいい、とりあえず何かを試す場所と考えればいい。たとえば、好きなアーティストの絵を見て「どういうふうにこの色を使ってあるのだろう」と思ったら、同じ色を自分でリサーチブックに作ってみるのもリサーチのうちです。

実験の場
日本の美大予備校に通っていた時もアイデアを書き留めるノートは持っていたけれど、リサーチブックというものはなかった。じゃあアイデアブックとリサーチブックの違いは何だろう?う~~ん、リサーチブックはアイデアブックより大がかりな「実験の場」というべきかな?
たとえば(これは私が実際にやったことですが)3Dのスペース(パースペクティブ)に興味があるなら、街に出ておもしろい形の建物や入り組んだ形の道を写真に撮る。その写真をコラージュやペイントなどの方法でリサーチブックの中で発展させていく。この時点でも何が出来上がるかまだわかりません。だから完成したものが最初の計画と全然違うものになっているなんてことは普通です。
最初から「この形をつくろう」と決めて作ると、できた作品が固まったように見えちゃう。というか、すごく「静止画像」みたいになっちゃうんですよ。リサーチを経た作品は出来上がりがおもしろいし、作品の可能性がさらに広がるように思います。完成した作品よりリサーチブックのページにある作品のほうが面白いじゃん、ということもよくあります。

クリット
ファンデ時代の地獄と言えばクリットです。皆が見ている前で二人がペアになってお互いの作品の解説や批評をするのですがこれが辛かった。自分の英語が足りないせいで自分の成績が下がるのは仕方がないけれど、クリットだと相手の成績にまで影響してしまうのです。何を言っていいかわかんないからすごく適当なことを言ってそのたびに心の中でペアの相手にあやまっていました。
今通っているWimbledonでもこの間彫刻と絵画の学生がペアのクリットをやったんです。初めにクラス全員がある作品の解釈をし、最後にその作品の制作者本人が解釈をするというやり方でした。面白いけれどやはり難しかった。きっといつまで経っても慣れないんだろうなぁ。

驚いた
ファンデが始まったばかりの頃のドローイング授業はスタジオが学生でギュー詰め。何か窮屈そうに思えました。「だいじょうぶ。クリスマス明けにはスペースが増えているから」というチューターのセリフ通り、年が明けたら確かに人数がガクンと減っていました。イギリス人は「合わない」と思うとぱっとやめちゃう。びっくりしましたけど、それは結局時間もお金も無駄にしないことになるからいいことだなと思いました。日本人だと「払った分がもったいない」ってなるじゃないですか。イギリス人はお金よりも時間を大事にするんですね。

♡♡ カオリ先生 ♡♡
ところで、Byam ShawのファウンデーションにはKaoriさんという日本人の先生がいて彩さんのチューター(担任)でもありました。もちろん、ふだんの会話は英語ですが、どうしてもわからないときには日本語で補足説明をしてくれたそう。Byam Shawには日本人学生が片手に収まるほどの人数しかおらず、友達に聞くというのも難しい状況で英語の弱かった彩さんにとってカオリ先生は大きな支えでした。制作や勉強面だけでなく、ビザの相談にも親身になって乗ってくれたそうで、まさに「進級の恩人」。


Byamファンデに物申す
不満ですか?なんだろうなぁ。学部への進学申込み手続きや内部面接の案内などの具体的な情報がきちんと流れてこないルーズさかな。書類提出の場所さえ誰に聞いてもわからないことがよくありました。Byamのファンデに限った話じゃないですけど、この国の人には事務的な面をもっとしっかり締めてほしいと思います。

お気に入りの場所
建築ファンデ&ファインアートのファンデ(私たちのクラスです)のスタジオは最上階にあったのですが、そこが一番のお気に入りの場所でした。放課後居残って友達と無駄話をしながら制作するのにぴったりな気持ちのいいスタジオでした。

デル?
ちなみに、一番上の階の女子トイレには「出る」というもっぱらの噂…そう、幽霊が。私は行かないようにしていましたが、他のトイレも突然ドライヤーが動いたり、閉めているはずの蛇口から水が出たりで、「やっぱり居るんじゃないのー」と怖かったです。ロンドンが古い歴史のある街のせいか、Byam Shawのキャンパスにもけっこう「ソウイウ雰囲気」があるんです。

好きな作家
パウル・クレーです。絵にリズムがあって色がすごくきれい。リサーチのときにもよくこの人を使わせてもらいました。晩年の天使のドローイングが特に心を打ちます。死ぬ間際に描いたといわれている作品ですが、これを描き上げた時のクレーは体が硬直して動けない状態だったといいます。戦争のせいで祖国を追われて苦しい状況が重なっていたのに、すごくやさしい絵なんです。そんな苦しい中でどうしてこんな絵が描けたのだろうと涙が出るほど感動しました。
好きな作家は似た感じの人たちになってくるんですね。カンディンスキーもいいなと思ったら、実はクレーと同じ学校で教えていたそうです。こっちに来て色々見て自分の好みがわかるようになりました。「こういう作家が好き」って言うとチューターもその作家に関することを教えてくれるし、そうやって世界が広がっていきます。

休日の過ごし方
美術館に行ったり友達と家やカフェでおしゃべりしたりです。一番好きなギャラリーはナショナル・ギャラリー。金曜の夜は遅くまでオープンしてコンサートが催されていて、雰囲気もいいし最近のお気に入りです。

留学のきっかけ
美術を学びたいと思っていたけれど日本の美大をいくら見てもピンときませんでした。予備校も通いましたがイライラするだけで嫌いでした。どうしようかなーと思っていたとき母親が「こんなのがあるよ」と見せてくれたのがユニコンとロンドン芸大の資料でした。「あーそっかー、こんなのもあるのかぁ」という感じで留学することに。

投稿者 unicon : 03:28

2010年03月01日

【コース体験記】(おまけ編) ファンデ面接(よねと君)

(Central Saint Martins College of Art and DesignのDiploma of Foundation Studies in Art and Design合格、同大学のBA Fashion Design希望)
セントマーチン周辺

今後このコースを受験する方のために、具体的なことを含めて書こうと思います。参考になれば嬉しいです。今から一年前くらいにCentral Saint Martins College of Art and Designのファッションデザイン科を詩って、コンセプチュアルなファッションに興味をもちました。そして、そこへ入学するためにファンデーションコースへ行こうと決意!同時にデッサンの勉強を始めました。

最初はどんなことをしていいのか分からず、日本の美大進学を希望する人と同じように静物デッサンなどをしていました。夏にUALの教授が来られてのオリエンテーションのような会に参加して、なんとなくだけど、UALの芸術に対する考えを理解。
「一つのことをどんどん発展させていって、新しいものへつなげていく(Development)。その過程が芸術。」そのことを教授は、
’Art is not a destination, but a journey.’
とおっしゃっていました。

日本の芸術の考え方とは微妙に違っていて、ポートフォリオを作るのに本当に苦労しました。最終的になんとか形になったポートフォリオの内容は大小含めて30点くらい。ドローイング(素描が多かった)、ペイント、コラージュ、写真など。作品の数はあればあるほどよいみたいです。

僕がいちばん大切にしていたのはコンセプトで、(正直技術では勝負できない!)あえてファッション的な作品は入れませんでした。というのも、将来何を作るときでも根本にあるものを大切にしたいという気持ちがあるし、夏のオリエンテーションで感じた、一つのテーマを発展させるということに重点を置きたかったからです。

面接ではやはりファッション的な作品がないことを激しく問われました。’Why fashion?’というコリン教授の鋭い眼差しをはっきりと覚えています。怖かった!しかし、自分の考えをはっきり言ったら、教授も理解してくれたようでした。

ズバリ、CSMのファッションで最も重要なのが、ドローイング、しかもLife Drawing(ヌードデッサン)です。服を着させる前の体を観察して、平面に表現することを要求されます。多分、素描や人物画はどれだけあってもよいと思います。僕のポートフォリオはdrawing①:ペイント①:その他①くらいの比率でしたが「ペイントが多すぎる。もっとdrawingを増やせ」といわれました。

そしていちばん鋭く突かれたのが、「あなたのポートフォリオの弱点は何か?」という質問。一生懸命、「平面ばかりだから、立体にしたい。」とか、「視覚しか要素がない」などこたえていたのですが、あっさり、「それは当たり前。Not interesting!」といわれてしまいました。コリン先生の求めていた答えは・・・「展開がない」というものでした。僕のポートフォリオの弱点は一つのことに固執していて、展開がなくなっているということでした。これからポートフォリオを作ろうとする人は、興味のあるテーマをさまざまな角度からリサーチし、CSMだったらドローイングをたくさんすればいいと思います。

結果、コリン教授はCSMとLCFのファウンデーションコースのオファーをくれました。最初ファンデーションはCamberwellにしていたのですが、Camberwellはファッションには強くないということでオファーはくれませんでした。

それから、IELTSスコアは取っておいた方が有利だと感じました。英語についても同等に評価されるので、美術も英語も、両方がんばってネ!面接の時に少しでも言葉が発せられれば熱意も伝わるし、自分の意見を間違って捉えられることも少なくなるしね◎

がんばってください!

投稿者 unicon : 23:53