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2013年02月19日

【コース体験記】オトナの留学:サマースクール@セントマ
“Fashion Drawing”と“Introduction to Drawing”

~ I've been to London to draw : 夏のロンドンに絵を描きに行ってきました ~
(Pussy cat, Pussy cat, where have you been)



『夏休み講習』は学生だけの特権ではありません。オトナにだってチャレンジしてみたいことがけっこうある。でも、何の束縛も責務もなかった学生時代のようには時間が自由にならないの。会社や上司や同僚って存在があるからね。社会人はちょっぴり辛い。


そこで、「1週間」からでもできる、というのでイロイロ忙しいオトナからも熱い視線を浴びているのがセントマーチンズの夏のアート大祭典、 サマースクール
2012年の夏は延べ7500人以上が世界中からセントマに集結。文化と言葉の壁をものともせず、ロンドンのサマータイムを満喫しました。
日本からも少なからぬ数の方々が延べ130コースに参加しました。
概ね大々好評、たくさんの【行ってよかったメール】がユニコンに届きました。ユニコン、嬉しいッ。


「せっかくの夏休みだしぃ、食べて飲んで遊んで寝ての自堕落生活サイコー!」と、普段ほとんど使ってないのに脳ミソ休息対策だけはバッチリのユニコン某スタッフは、多少赤面しながらそんなメールの前にひれ伏したのでした。


そんなオトナの留学を体験された大内さんにお話をうかがうことができました。

大内さんはどんなお仕事をされているのですか。
ビジネス系の出版社で20年ほど、雑誌の編集をしています。いまは雑誌の副編集長と書籍編集長の兼務で、単行本もつくっています。

ビジネス最前線に長年いらっしゃるのに、なぜに今頃ロンドンで、しかもアートだったのでしょうか?
絵を描くのは幼稚園のころから好きで、図画工作と美術は学校の評価で5から落ちたことのない唯一の科目でした。大学は(日本の)四年制の日本文学科に進みましたが、じつは今の仕事でも誌面のレイアウトや図表のデザインには日常的に関わっています。
もうひとつには、両親の仕事(服飾関係)の影響があります。『装苑』や『MODE et MODE』がいつも家にあり、もともとファッションには興味をもっていました。
そのため今回は、ファッションと本格的なデッサンの両方を学びたいと思い、1週目にFashion Drawing、2週目にFine Artの授業を選びました。

「実は昔からアートとかファッションが好きだったけど、その道に進むには勇気がなくて…でも一度でいいから本場のアートに真っ向から触れてみたい」 というお話はユニコンにご相談にみえる多くの社会人の方からよく聞きます。「行ってみたいけれど、アート経験が少なくて英語が弱い私でもだいじょうぶなの?」と二の足を踏んでいらっしゃる方のために、大内さんが参加されたコースの様子を話していただけますか?


◆◆◆ Fashion Drawing ◆◆◆

期間は2012年7月8日からフルタイムの5日間。生徒は15名。
友人とペアで参加したスペインとブラジルのほかは国籍が全員バラバラでした。フランス、イタリア、北欧、タイ、アフガニスタン、韓国など。二重国籍の人も何人かいました。
半分は学生、残り半分はファッション業界で働く社会人でした。男性が一人、あとは全員女性です。
この男性は東京在住の韓国籍の大学生で、日本語が通じるのは彼のみ(そのため、最初から英語で苦労しました…)。日本国籍はわたし一人でした。学校全体でも日本人と思われる人は3、4人見かけただけです。

以下、作品の解説です。
(写真はクリックで大きく表示できます。)


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Fashion Drawing1日目の午前中は手を慣らすためのデッサンをいくつか。短い休憩とランチタイムのあと、午後は男性のモデル(背が高い。実際のファッションモデルか、モデルを目指している人のようです)が登場。チューター(元気な女性の先生)が用意した服や布(さまざまな素材や色があります)を次々と身につけ、ポーズをとります。それを短くて5分、長くて7分か8分で描きます。写真は最後の3枚。



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2日目午前中。
女性のモデルがきました。ひとつは線を12本だけ使って描く、もうひとつは右手と左手、それぞれ別のペンで同時に書くエクササイズ。






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同じく2日目午前中。
両端の2枚は、A2の紙のすべての辺に、線を触れさせて描くというエクササイズ。やってみると、けっこう大変です。






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2日目午後。
1日目と同じく、モデルが次々に服とポーズと変えます。10枚以上描いたうち、最後の3枚。






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3日目。
感情を描くエクササイズ。赤のパステルと黒のインクが怒りで、青の水彩クレヨンが哀しみ。毎日、モデルが変わります。画材も、水彩絵の具、マジックのほか、日本ではみたことにないグラファイトペンシル、水溶性クレヨン、インクなどを、次から次へと取り替えて使います。1枚の作品の中で、3種類以上のequipmentを使うようにというエクササイズもありました。



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4日目。
今日から男性のチューターに変わりました。通常の学期では、顔の描き方のクラスをもっているそう。顔を描くのは難しすぎて、独学ではとてもムリ。・・で、これはすべて先生の作品。こんなにシンプルな線だけで、でもモデルにそっくりです。



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5日目。この日はコラージュをメインにした授業。モデルは1日目と同じ男性がきました。1枚の紙に四体を描き、色を塗る箇所をバラバラにしたり、下地に水彩絵の具を塗って、そのうえからドライな素材で描いたりします。




◆◆◆ Introduction To Drawing ◆◆◆

2012年7月16日からのフルタイムの5日間。生徒は15人ほど。
ほとんどがイギリス在住の社会人。男女が半々。職業も年齢もバラバラです。ここでも日本人はわたし一人でした。
先生も本格的でいかにも美大で教えているという印象でした。

1日目と2日目は初心者向けの基本という感じで、デッサンを何枚か。サインの練習などもあります。実技と講義が半々くらい。スライドを見ながらの講義ですが、英語力がないと苦しい。

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3日目。
午前中は静物の授業です。さまざまなオブジェを描きます。これは最後の一枚。オブジェだけだとつまらないので、背景にクラスメイトをひとり入れ込んでいます。








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モデルとなったクラスメイトは、こちらの彼女。手前にかざしているのは、光の明暗をチェックするためのスケールです。






IMG_unicon11.jpg IMG_unicon12.jpg IMG_unicon13.JPG


3日目の午後はモデルが登場して、ヌードデッサンの授業です。いずれもA1サイズの紙に描きます。




IMG_unicon14.JPG4日目。
午前中は、Dynamic Nude(ダイナミックにヌードを描こう!)という授業。使うのは前日と同じ木炭ですが、最初にインクを溶かした水に発泡スチロールの破片をひたし、それで大きく輪郭をとります。それから木炭。最後に白のコンテクレヨンでハイライトをつけるという手法。こちらも紙はA1サイズ。すべてのプログラムのなかで、この授業がもっともエキサイティングでした。描いていて、被写体のもつ生命力が自分の指先から入ってくるよう。選評のとき、クラスメイトのほぼ全員が「いちばん好き」な絵に選んでくれました。



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最終日は、HBの鉛筆でモデルの顔を描く授業。顔のアップを描くよう指示が出ていた(らしい)のに、何と先生の英語がわからず、全身を描くというマヌケぶりです。そのため、肝心の「顔」をまともに練習できず、この結果に。右上は先生が描いてくれた見本です。







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Introduction To Drawing4日目の午後は場所を移しての講義でした。ランチのあと、トラファルガー広場にあるNational Portrait Galleryに集合して、いくつかの絵の解説と、模写のレクチャー。実際に模写をする時間はとれないので、10分くらいで模写のまねごと。授業のあと閉館までの時間と、帰国前の土曜午後を使って励んだ結果がこのとおり。ここまでで、計5時間かかっています。手前の虎と右下のところにもっと鉛筆を足したかったのですが、最後は時間切れで警備員につまみ出されました。帰国後、報告も兼ねてクラスのFacebookページにアップしたところ、先生とクラスで一緒だった人たちが喜んでくれただけでなく、知らないスペイン在住のタトゥ・アーティストにシェアされるという意外なオマケが。



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なお、Facebookで見て、とても大きな絵と思った人がいるようですが、このとおりMacbook Air 13インチと同じサイズです。




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滞在でお世話になったのは、セントマーチンズが手配してくれたロンドン大学の寮。地下鉄Russell Square駅の近くにあります。開幕前のロンドン五輪スタッフの姿も多く見かけました。







課題ごとに詳しい説明をしてくださりありがとうございました!
最後に、2週間の濃厚なロンドン・アート体験の感想を話していただきたいのですが。

反省点としては、実技うんぬんより、何といっても英語を甘く見たこと。
まったく聞き取れませんし、聞き返しても、同じ単語が同じ発音、同じスピードで繰り返されるだけです。見かねたほかの生徒が口々にあれこれいうのですが、先生が話すより、もっとわからない。Introduction To Drawingのクラスメイトの中にロンドンのテレビ局につとめるイタリア人女性がいて、彼女とだけはかろうじて会話が成立しました。英語の発音に母音が混ざっていて、聞き取りやすかったからかもしれません。
もうひとつの問題はボキャブラリーです。というのもパブに寄り道したときに気づいたのですが、会社帰りのビジネスマンの話は意外とわかるのです。これはわたしの仕事がビジネス誌の編集ということと、日本で勉強していたのがビジネス英語だったためと思われます。しかし、これらはほとんど何の役にも立ちませんでした。
このコースにはまたチャレンジするつもりでいますので、そのときまでにFine Artの授業でもらったサマリーから、絵に関連した単語(たとえば「輪郭をとる」=contourなど)を拾っておきたいと思います。


なるほど、【アート単語帳】ですか。即、役に立ちそうですね。
毎日が時間と競争の忙しいお仕事の合間に大変濃いお話をしていただいてありがとうございました。

投稿者 unicon : 2013年02月19日 12:51