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2016年08月03日

大島リリオ君(19歳):バッキンガムの恋人 - 恋はいつもビターだから。

------ ずうっと一番好きだったのにちょっと遠慮していたから再会が遅れちゃったけれど -----

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リリオ君のプロフィール
ririo.jpg リリオ君は1996年生まれの19歳。初めてユニコンに登場したのは今から2年前。当時は木更津にあるサッカーの強豪として有名な全寮制高校の2年生で、リリオ君自身もサッカー部の一員でした。都内にある実家に戻るのは週末と長期休暇期間だけで、それ以外はサッカー漬けの日々を送っていると聞いたユニコンはサッカー方面の留学業務経験がないので、正直、相談に来るところ、間違ってんじゃないの?と思いました。
しかし、「サッカーの実力はスタメンと控えを行ったり来たりするようなレベルだから」「サッカーチームにプロ入りできると思わないし」と冷静な自己分析、さらに「僕は一人息子だからいずれおばあちゃんのやってる化粧品会社を継いで家族の面倒を見る責任があるし」と神妙な顔で大人を泣かせるようなコメントを吐くの。

好きなものはなんですか?
イギリス留学についてはどちらかというと帰国子女であったお母さんやイギリス好きのおばあちゃんのほうが熱心な感じで、本人は「英語力がついたらいいし」「プレーヤーにならずとも、好きなサッカーの本場で勉強できるのは魅力です」と、あっさりしたもの。なんか学習分野と結びつくような〔好きなもの〕があればいいんだけど。と、苦し紛れにリリオ君を見直してみると体育会系の割にはなんかとってもおしゃれ。顔も都会的だし着ている服も木更津で青春を過ごしたとは思えないセンスの良さ。
ひょっとしてファッション関連の勉強なら脈があるかも? と、ちょっとゴーインかな~と自らに突っ込みを入れながら、リリオ君に「ファッション関係の勉強に興味ない?」と聞いたら、「ファッションすか、いいかも」「サッカーのユニフォームのデザインの勉強なんかいいっすね」と軽くノッて来た。おまけに、「おばあちゃんの会社の仕事とまったく関係ないわけではないし」と自らフォロー。ほんとかな?

おしゃれとサッカーが好き➔サッカーのユニフォームも好きでしょ?➔ファッションの勉強?って、無理やりすぎるだろ!とは思ったがユニコンも他に当てがないし。つーか、まだ17歳だし、サッカー漬けの生活しかしてきてないから英語のレベルもあまり期待できそうにないしねー。まーいいや、高校卒業するころにはもう少しはっきりしているだろうと思うことにして、「本人が高校を卒業したらイギリスとの相性を探るためにちょこっとロンドンの語学学校に通ってみましょうか」と先送りしたのでした。

ロンドン、楽しい
2014年12月、高校の卒業を控えたリリオ君と再会。留学の意思は変わっていないという。学習分野については「とりあえずファッションデザインとかファッションビジネスということで」と前回から特に成長の跡見られず。ま、何を勉強するにも先立つものは英語だし、ということで、様子見がてらロンドンの語学学校(セントジャイルズカレッジ)に送りました。

知り合いが一人もいない言葉もろくに通じない環境でどれくらい持つかな~というスタッフの危惧を裏切るかのように、ロンドンからのリリオ・メールには「ホームステイ先の家族がとっても親切で」「サッカーにも誘ってくれる」「英語もバンバン話しています」「ロンドン、楽しい」と、なんか前向きな感じ。渡英前に受けたIELTSテストは予想を裏切らない3.5というスコアだったのが、3ヵ月後の受験で5.0をゲット。しかも Speakingが6.0(ユニコン、マジでビックリ)。ロンドン芸大のファッション関連コースを目指すという行き当たりばったりなプランがなんとなく現実的なものに近づいたのでした。
そこで勧めたのがセントマーチンズオリエンテーションコースの受講。ここに通えば服を買ったりおしゃれをしたりするのが好きなこととファッションを勉強することとは全くの別物だってわかるはず。

アートじゃないかも
オリエンテーションコースが後半にさしかかったころ、リリオ君が来社。
「クラスは楽しいしアートをやるのも楽しいんですが、このままアートの方向に進むの、なんか違うかな~、みたいな気がして。僕、前にも言ったように将来は家族のみんなを食べさせていかなきゃいけないから楽しいだけの勉強を続けるの、ちょっと抵抗があるんですね。社会に出たらビジネスの社会で即戦力になるための勉強をしたほうがいいかと思って」 あらあら、大人になったのねー。感心なコメントだけど、ユニコン、ちょっと引っかかるかも。家族思いなのは立派なんだけど、18歳の少年が自分の進路を決めるのに家族を最優先するかなー?ほんとに好きになれるものがまだ見つかっていないからすぐに‘家族’が出てくるんじゃないの?

しかし少なくとも、そのままロンドン芸術大学に進学する選択肢だけはここで削除されました。

早く稼げる人間になりたい
「早く世の中に出て稼げる人間になりたい」というセリフだけは本気だろう、とリリオ君に勧めたのが「早く卒業できる」バッキンガム大学。今頃の20代の若者には昔過ぎてピンとこないかもしれないが、バッキンガム大学は今から約40年前に「鉄の女」の異名をはせたマーガレット・サッチャー元首相(1925 - 2013)が創設した、1年間4学期制にすることによって通常3年間かけて取得する学士を2年間で取得することを可能にした英国唯― の私立大学です。

教育の独立、自主独立、学生第一の精神を掲げ、校訓は「Alis Volans Propriis:自らの翼で羽ばたけ」で、この大学の法学部は英国で最も多くの職業弁護士を輩出していることで有名です。また、アカデミック色が強すぎて意外に企業からの評価が低いロンドン大学と違い、〔実践力〕を優先したこの大学の〔ビジネススタディ〕は企業から高く評価されています(‘アカデミック’とはビジネス界においては「雇いにくい」の代名詞でもあることが実は多いのです。アカデミックのビジネススタディや経済学はサラリーマンを育てる勉強じゃないから)。 どちらかというと‘口’より先に‘体’が動く、そして早く卒業して早く社会で活躍できる人間になりたい、というリリオ君にピッタリではありませんか。

「ちょっと田舎だけど、ま、2年間の辛抱だし、サッカー部もあるし、お試し的にとりあえず3ヵ月の英語コースに行ってみようよ」と軽く誘ったところ、「え~っサッカーできるんですか!」、「ぼく、田舎なら全然大丈夫です。木更津でそれどころじゃない生活をしてきていますから」とこれまでになくノリノリ。ふうん、やはり‘サッカー’がキーワードか … ま、あんな田舎じゃサッカーでもするしかないんだけど、とは口にせず、やっぱ体育系だから納得するのが早いっすね、と単純に思ったユニコンでした。

2015年9月、リリオ君、バッキンガムに旅立ちました。

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1年後
2016年5月、リリオ君のお母さんから電話がありました。リリオ君がバッキンガム大学のサッカー部で大活躍していてその記事が大学のホームページに載っているというのです。早速チェック。あらーいい顔してるじゃない。心なしか知性的になった気がするし。
同年7月、一時帰国中のリリオ君がユニコン東京事務所に「遊びがてら」来社してくれた機会を逃さずにインタビューをお願いしました。
インタビュアーはMr. 佐藤、ユニコンの長老です。

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佐藤: 入学したの、去年の9月だからだいぶ田舎にも慣れただろう?
リリオ: すごく楽しいです。本当にバッキンガムに入学して良かったって思ってます。

佐藤: マジで? でも君、入学して1ヵ月も経たない頃、「なんかこの大学とは合わない気がする」って暗い声で電話してきたよな。
リリオ: はい、あのころは9月に入学してすぐ入ったクラス、自分の英語力が低いせいもあったけど、クソみたいなレベルで、おまけに中国人学生が多くて嫌気がさしたんです。で、コース中に何故だかIELTS 5.5取れたんで、コースを切り上げてちょっと日本に帰ったんです。5.5あれば(もしファウンデーションコースに入りたいときには)問題ないから。あとでチューターに聞いたら「もう、リリオはバッキンガムに戻ってこないかも、と心配していたんだよ」と言われました。

佐藤: そのときだね、日本から俺に電話してきたの?
リリオ: 正直な話、このまま大学やめちゃおうかな~とも思って社長(佐藤)に電話してグズグズこぼしたわけです。でもせっかく大学のサッカー部に入部したことだし、もうちょっと頑張ってみようかと考え直して今年の1月に復学しました。心配していてくれたチューターにつたない英語ですがとにかくクラスに対する文句を力いっぱい伝えたら、今年の1月から〔英語圏外の学生を対象にした〕ファウンデーションコースに入れてもらえました。今度はクラスのレベルも高く、中国人だけでなくフランス人やオマーン人の学生もいたので楽しめるようになりました。そこで結構頑張ってたら、なぜだか僕の英語レベルは高いって思われたらしく、4月からは〔英語圏ないしは英語で教育された学生を対象にした〕ファウンデーションコースに移されました。

佐藤: そのネイティブだらけのファウンデーションではどんな調子よ?
リリオ: 僕以外はほとんど全員ネイティブなので、本当に英語では苦労しています。
特に読み書きに苦労していますが、小さいクラスだし先生やクラスメイトに助けられながらなんとかやれています。この間なんか、サッカーばかりしているうちに3本ほどエッセイが溜まってしまい図書館で徹夜してしまいました。でもイギリス人学生が朝まで付き合ってくれたのでそんなに苦しくなかったです。

佐藤: 英語以外の問題はないのかい?
リリオ: 意外なことに、実は数学が一番点数取れたんです。正直、日本では全然得意科目ではなかったんですが、クラスのナイジェリア人学生の数学レベルって半端なく低くて、おかげでたとえ勘違いでも僕はけっこう数学出来るんだって自信が持てました。マジ、かれらは小数点以下の計算とか全然できないんですよ。ひょっとしたら日本人はけっこう賢いんじゃないかって思うことがあります。
ただ、夏学期にはその得意の数学が無いんでちょっと大変ですが、まあ自分で言うのもなんですが大丈夫だって思っています。イギリス人より何か一つでもできることがあるってことは自信になりますね。僕の錯覚かも知れないけど(笑)。

佐藤: 今度の9月から学部課程に進むんだよな。
リリオ: 今のところ65%以上の成績なんで、この調子で夏学期を抜ければ9月からの学部進学は問題ないと思います。将来は親の仕事を手助けしたいって思っているのでビジネス系の学部に進学を考えているのですが、選択がいろいろあって悩んでいます。
あ、それとスペイン語も是非勉強したいって思っています。スペイン人のサッカー選手で大好きなプレーヤーがいるんです。チューターに相談したら、スペイン語のコースは1月からしか開講しないんでこの9月から12月まではビジネス系の学部で勉強し、1月になったらなんとかしてくれるって言ってもらえました。

佐藤: おいおい、そんなに欲張って大丈夫なわけ? 君、サッカーもやってるんだろ? バッキンガムのHP見たよ。すごいじゃないか。三つ子の魂なんとやら、だと思ったよ。
リリオ: はい。実はそれがこの大学に入った大きな目的の一つでした。プロの道は無理でもやっぱ自分でサッカーするのが一番好きなんだと改めて思いました。だから去年の9月、入学するとすぐにサッカー部に顔を出して入部したいって言ったら、試合形式の入部審査みたいのがありました。って言っても僕から見れば誰でも入れるようなレベルで、こんなんで大丈夫かな?なんて思いましたが。

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佐藤: サッカー部に入って良かったことってある?
リリオ: とにかくサッカーを通じてたくさんの友達ができました。サッカーのおかげで英語力も確実に上がってきた気がします。授業後は毎日のように連絡を取り合い、大学の裏にあるレジャーセンターのサッカーピッチで練習をするんです。大学のグラウンドもあるんですけど、ちょっと遠いんでいつもそこにみんなが集まります。友達の輪が広がりました。グラウンドの練習がない時は同じセンターにあるジムで筋トレしています。

佐藤: バッキンガム大学のサッカー部ってどんな感じなのよ?
リリオ: サッカー部にいるアジア人学生は僕一人です。イギリス人もいるしナイジェリア人学生も多いです。ナイジェリア人は技術が無いけど、とにかくフィジカルが強くてそれをどのようにして潜り抜けるか大変です。日本の高校でサッカーしていたころはとにかく技術を磨くことに重点が置かれていたので僕も結構テクニックには自信があります。しかし、そんな選手ばかりで試合するとどうしても同じような動きになるんですが、ここでのサッカーは技術などお構いなしの選手が多いんで、そこが本当に新鮮に感じています。いかにも外国人と勝負しているって感じですごく楽しいです。正直、日本ではサッカーをやりたいってあまり思わなくなりました。自分とは全然レベルは違いますが、多くの日本人プロサッカー選手が外国でプレイしたがる気持ちが分かるような気がします。

大学のサッカー部は近隣地域のチームで構成されている独立リーグに入っていて、ホーム10試合、アウェイ10試合の年間20試合のリーグ戦をやっています。この独立リーグは4部に分かれていて、年間試合成績で入れ替えが行われています。大学チームは1部にあって、前期優勝したんですよ。特に準決勝、決勝と僕はゴールして貢献できたなって思っています。

佐藤: そのときの写真がHPに載ったやつだね?
リリオ: はい。大学のチームにはセミプロの学生がいるのですが、あのリーグ戦での僕のパーフォーマンスをみて自分が属するセミプロチームを紹介してくれました。そのセミプロチームの監督に会ったところ、彼もあのリーグ戦での僕のプレィを見ていたそうで、自分のチームではなくもっとレベルの高いチームに挑戦してみないかって言われました。実は今度そのチームのトライアルを受けることになっているんです。トライアルを受ける予定のチームはあのプレミアリーグの下部チームで、もしそこには入れれば少し給料ももらえるらしく、僕としては可能性は高くないけど何とか入れるよう頑張ってみたいって思ってます。

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佐藤: サッカーと大学の両立は大丈夫?
リリオ: それは自分でも気になっている点です。セミプロの学生は勉強がおろそかになって留年したって話も聞いています。でも大学での授業は週4日程度なので両立は可能だと僕は思っているし、是非とも両立してゼッタイ大学を卒業しようと思います。

佐藤: バッキンガム大学は先生たちも親切だろう?
リリオ: 一言でいえば最高の先生たちばかりです。決して上から目線ではなくいつもカジュアルに接してくれます。生徒を助けたいという意識が高いと思います。学生数が多くないんで、学生の一人ひとりの状況を把握しているし、いつも声をかけてくれます。ある日本人学生なんか、勉強で落ち込んでいるときチューターが毎日のようにメール相談に乗ってくれたと言っていました。
僕は日本ではサッカーしかやってなくて正直勉強は苦手でした。そんな僕がなんとかやって行けるのはこのような先生たちのおかげだって思います。また、日本人は基本的に真面目なのでどこの外国人学生よりも好かれているように感じます。だって、ナイジェリア人学生なんてすぐに授業サボるし、中国人はいつも中国人同士で集まって中国語でしゃべっていますからねー。

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佐藤: 都内のど真ん中で生まれ育った君がそんだけ田舎でハッピーに暮らしているとは、俺も嬉しいよ。
リリオ: 確かに田舎ですが治安がすごくいいし本当におすすめの大学だと思います。僕みたいな勉強苦手の学生にも先生たちがめちゃ親切に接してくれて、例え勘違いでも勉強に自信が持てるようになったことに感謝しています。特にぼくはサッカーをやっているせいか田舎であることは全然苦になりません。勉強でも遊びでも何か自分が好きでやることがある人、そしてオープンな性格の人なら友達がたくさんできるから田舎の大学でもいいと思います。

佐藤: 君はオープンな性格だから、大学で友達もいっぱい出来ただろう?
リリオ: 勉学+サッカーという感じの友達関係なのですごく充実しています。僕はサッカー以外でもいつも明るく、自分からいろんな人に声をかけるように心がけています。例えば大学では毎週金曜日に学生会がオーガナイズしたディスコ・パーティが学食で開かれていているんですが、精一杯参加していたら知り合いが一気に増えました。友達がたくさん出来るかどうかは自分の意識次第なのだと思います。

佐藤: ときどきはロンドンに出てくるの?
リリオ: はい、バッキンガムは田舎とは言ってもロンドンに近いので時々電車でロンドンに出かけて日本人の友達(オリエンテーション時代のクラスメート)に会うんですが、ロンドン市内の大学に通っている彼らの話によると、大学の規模が大きいと学生同士の交流は意外と希薄になるようで外国人の友達は殆どいないそうです。僕が多くの外国人の友人たちとサッカーしたり遊んだりしているっていうと羨ましいと言われます。バッキンガム大学近くのスーパーに買い物に行けば必ず2~3人の知人に会うくらいだから、たとえサッカーをしてなくても退屈はしないと思いますよ。
そうそう、学食のおばちゃんとも仲良くなって、「今日はリリオの好きなケーキがあるよ」なんて声をかけてくれたりするんですよ。バッキンガムは小さな大学だけど、人間関係の密度が濃厚だって思います。

佐藤: 学部課程が始まったらマジ勉強が大変になるけど、サッカーとの両立がうまくいくことを祈ってるよ。つーか、君は高校を卒業したころに封印していた夢にもう一回出会ったんだね。ヘタしたらビジネス社会の戦士というよりは…
リリオ: はい、今の僕の夢はいつかプロのサッカー選手になることで、それは途方もない夢だとわかっているけれど、まだ19歳だし少しでもチャンスがあればチャレンジしたいんです。
にしてもバッキンガム大学の外国人学生は半端ないお金持ちの子弟が多くて、彼らは意地悪な性格でないから付き合いやすい。ただですねー、こういう連中はハングリー精神がなくてテキトーなんで、サッカーするとムカつきますが。

佐藤: とにかく、卒業だけはしてくれよ。


------ ちょっと紆余曲折はあったけれど今は幸せいっぱい。

その幸せが永く永く続きますように。ディスカバー バッキンガム ------



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