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第04話:わたしがコレを選んだわけ

2001年、アヒル第1号が飛び立つ日が近づいていました。第1号は、東京モンを装っているが2年前までは福岡(の、しかも市外の県道)を自由奔放に走り回っていた福子さんでした。
ところで、福子さんは東京の大学ではファッションと全然関係ない学科を専攻しています。それなのに、なぜいきなり突然、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを選ぶことになったのでしょう。
実は同カレッジへの進学希望者にはファッション界と無縁な人が毎年多く含まれています。また同カレッジは、おそらくこの10年、英国全土の大学の中で最も急激に拡大し発展し力強い成長を続けてきています。福子さんの選択動機をさぐればロンドン・カレッジ・オブ・ファッションの急激な成長の秘密がわかるかも。

福子さんのファッション道の歴史 
母も祖母もとにかく着道楽でした。独身時代の母は給料日になると祖母と二人で博多の街で待ち合わせをして買い物に出掛けていたそうです。話によると、曾祖母も着道楽で、界隈ではなんとか小町と呼ばれるほどハイカラで鳴らしていたというし、祖母の妹は(あの時代に)洋装ブティックを経営していたし(田舎では浮きまくり?)、母の従兄弟もニューヨークにファッション留学してそのままあちらで働いていたし、よくよく聞けば父方の祖父の実家も元は仕立屋だったらしいし、なんだか妙に服飾一家?そんな中で初孫として生まれた私は和洋の装を問わず全員によってたかって飾り立てられ、着せ替え人形として人生をスタートしたらしいです。

そんな環境の刷り込みのせいかファッションへの関心は高かったのですが、進学先として美大や服飾大学が選択肢に含まれることはありませんでした。どの学校の学生の作品を見ても、田舎者ながら「なんとなく型にはまった感じでイマイチ面白くなさそう」という印象を受けたからです。「それなら、将来ファッションをやるにしても、まず普通の大学で自分の哲学ちゅーもんを深めたほうが」という結論に達しました。まだ田舎の純な高校生だったので、そんな思考回路が果たしてどこまで自分自身のものであったのか思い出せないのですが(とりあえず日本の大学を出ておけ、という親や教師の意見に外堀から強く影響されていたのかも)。

大学では美学や美術史を専攻し、先輩がやっていたアングラ演劇の舞台衣装を作ったりしているうちに、「ファッションするなら衣装デザインがいい」と思うようになりました。それなら、文学というもうひとつの自分の好きなものにも関係してくるし、こんなハッピーなことはないと思いました。大学自体は全くもってつまらない場所だと思ってふてくされていた時で、それならここらで幼いときからの思い入れがある「留学」をファッションでやってやろう、と計画が自分の中でどんどん拡大。
ユニコンのおじさんにこんなマイ・ヒストリーを語ったところ、「ウン、じゃ、お前はカレッジ・オブ・ファッションね。で、コースはファッション・ポートフォリオ。経験もないし21歳にもなっていないからこれしかない(というか他に入れるコースないし)。おいしいコースよ、これは。」と大声でアドバイスされました。へぇ、そういうものかと思い、「あい、わかりました」とそのまま面接へ。

ゲスト・インタビュー :
福子さんに断言アドバイスをしたユニコンのおじさん(社長)にインタビューしました。

質問:
福子さんのカウンセリングは5分間で終わったと聞いていますが、5分でしかも断言アドバイスできた理由はなんですか?
S氏:
服買うのが好きだからファッション勉強したいというのに比べればまだマシなんだけど、着道楽だの、ちょっと舞台衣装を作るのを手伝ったら面白かったから、だの、マジでデザイン勉強するには動機がまだまだ薄いのよ。ファッションの基礎全然やってないし。この調子だと好きなものがいつ変わってもおかしくない。しかも大学じゃ関係ないことを専攻していて、おまけに3年生になってしまってからの休学で、1年ポッキリの留学でしょ。1年ぽっきりで時間がたっても心変わりしても、留学のミヤゲを残せるものと言ったら英語力だろうと、僕は思うわけ。好きなファッションを英語でやれば上達も早いだろうしね。最近は福子さんのように休学留学してくる学生が多いからボクも妙に慣れていて、おかげで5分でケリがついてしまったという次第です。

●●● アヒルさん達に聞いてみました ●●●
「留学することに決めた」と公表したときの周りの反応を教えてください。

福子さんの場合

両親は高卒後すぐ留学することには断固反対していたものの、「日本の大学に入りさえすれば、後は地球上である限りどこへ行ってもいい」などと「?」なことを言っていた手前もあったのか、特に反対はされませんでした。むしろ賛成…というか諦めていたのかも。親戚間にも拒否反応はとくに見受けられず、行ってらっしゃいムードでした。ゼミの先生も「ウン、ボク、そういうの大好き。どんどんやりなさい。」と言ってくれました。
ただ、友人の反応は性別によって分かれました。女性陣は「よかったね~」とか「いいな~私もどっか行こっかなー」とか「ファッションで行くのね。いーじゃん」と暢気な応援コメントをくれましたが、男性陣は「えー、お前、就職は」とか「いいね、女は好きなことできて」とか「ますます世間離れした潔い方向に行くね」とか、妙にじめじめしたコメントが多くて驚きました。もちろん、そういう男ばかりじゃなかったけれど。

投稿者 unicon :

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