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第12話:君よ地獄でオニとなれ

「最難関のファウンデーション」という表現から「入学するのが難しいから?」くらいに考えていた静子さんだったが、本当に難しいのは入学審査でもIELTSでも宿題の量でもなく……。

静子さん(2002年9月ファウンデーション開始間際)
あとは入学日を待つだけだと思っていたのですが、甘かった。
キングス・カレッジからのオファー・パッケージにはReading Listが入っていて、「入学日までにコレコレの本を読んでおくこと」と書いてあるではないか!! こむずかしそうな本が…しかも丸々3冊…しかも英語で…。

ずーんと重たい気持ちになったが読むしかないので、数週間をリーディングに費やしました。英語で、しかも、国際関係・ヨーロッパ社会学・現代史等々の内容なので、読んでも何のことやら全くほとんど意味が頭に入ってきません。とにかく読み終わることだけを目指して、読み続けました。

それでもこのリーディングを通して学んだのは、科目内容そのものより、日本とイギリスの教育の違いについてでした。特に印象に残っているのが歴史の本です。3冊のうち1冊がGCSEという英国の中学レベルで使われるテキストだったのですが、その内容に驚きました。

それまで、歴史のテストといえば、ひたすら事実を丸暗記して答えるものだと思っていたのですが、そのGCSEのテキストは事実を少し説明したあと、「なぜこの事件は起きたと思うか?」とか「この出来事におけるアメリカの思惑は何だったのか?」とか、「もしも、この時この人がこうしなかったらどうなっていたと思うか?」などの設問があり、それに答える形になっていました。
遠い昔に起こった出来事でも自分なりに考えることによって、「歴史」がはるかに身近なものになった気がしました。日本の高校でも丸暗記じゃない歴史を教えてくれていたらもっと楽しく勉強できて成績も良かったかもしれないのにっ、と世界史の成績の悪さを日本の教育のせいにしたりしました。

そしてキングス地獄は始まった。
入学日、キングス・カレッジの中に初めて入りました。高い天井の博物館にでもありそうな仰々しい装飾を施してある教室に集合しました。そこでオリエンテーションをして初日終了。わたしの仲間となる学生はたったの9人。極端な少人数っぷりに驚きました。アカデミックなコースだけあって(語学学校時代とは違い)周りの人がみんな頭良さそうで、英語も私よりずっと上手で、これから1年間本当にやっていけるのか心配になりました。

日本の大学と違い、歓迎会も合コンも飲み会も部活勧誘も全く無いまま。翌日からそのまま授業がスタート。週を追うごとに宿題も増え忙しくなっていきました。最初のレクチャーなんか、早回しか超高速で喋ってるんじゃ!?と疑いたくなるほど速く感じられ、何を言っているのかわからなかったし、筆記の小テストでは時間内に書き終えることができず、もう、かなり絶望的でした。


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