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第15話:キングスの虜
〜エピソード1:闘いの幕は上がった〜

初日からキングス・カレッジの重圧感にめげそうになりかけた静子さん。でも、山岳部で鍛え上げた足腰と人並みはずれた頑丈な胃袋を持つキミなら(多分)大丈夫。留学はなんと言っても健康第一だから。
ところで、近年すっかりお馴染みになった《ファウンデーション》という単語ですが、アート系と異なり、文系学部進学のためのファウンデーションは英語を母国語としない外国人学生を対象にしたものです。
「大変」という単語で縁取られている静子さんの原稿ですが、文系ファウンデーションの仕組みを知るいい機会? また、最近日本でも徐々に知られつつある「スタディ・スキル」の正体もついでに解明されるはず。

●●● 必修科目と選択科目 ●●●
キングス3Kファンデのメニュー(2002年9月開始)
コースはAcademic English・Higher Education in Britain・European Studiesの3つの必修科目と、選択科目1つで構成されています。国際関係学部への進学を希望していた私は選択科目として20th History and International Relationsを選びました。

●●必修3科目では●●
Academic Englishではその名の通り、Academicなシチュエーションで使う英語を習います。具体的には、レクチャー・ノートの取り方のコツ、ディスカッション中に使えるフレーズ(賛成の仕方、相手の話への割り込み方、説得の仕方等)、プレゼンテーションの組み立て方、エッセイの書き方などです(語学学校でやるような日常英会話は全く含まれません)。これらは全てイギリス教育の基本中の基本で、イギリス人高校生もこれらのスキルを11歳くらいから訓練されてきています。でも日本の高校を出たばかりの私は一問一答テストの勉強ならできても討論に慣れていないし、ましてやエッセイなんて書いたことがありません。日本語でもやり方がわからないのに、それを英語でやれっなのでダブルの大変さでした。

それでも、1年かけてみっちり基礎を叩き込まれるので次第にコツをつかめるようになりました。習うのが「アカデミック」英語なので授業がそのままIELTSの対策にもなります。                                    
(ファウンデーションから学部に進むときもIELTSスコアを要求されるのでファウンデーション期間中もIELTSテストを受け続けなければいけません。ロンドン大学系なら7.0~7.5のスコアが必要です)

Higher Education in Britain(英国の高等教育)では最初にGCSE、Sixth Form、A-levelなど、日本人にとって???な英国特有の教育システムを学びます。現地学生がどんな経緯で大学に入学できるのかわかったことで、翌年学部に進学したとき「Sixth Formにいたとき…」とか「A-levelのとき…」とかのクラスメートの話題についていくことができました。

英国の教育システムを一通り学んだあとは学部受験の準備に入ります。英国では現地学生だろうと留学生だろうと、受験生全員がUCASという全国共通の受験機関を通して学部に申し込みます。UCAS form(願書)への記入方法やPersonal Statement(志望動機)の書き方、志望校選びなど多岐にわたった指導があるので、UCASについて何も知らなかった私でも問題なく手続きできました。そしてここからお受験の長~い道のりが始まるのですが、これについてはのちほど。

European Studiesでは、1学期にヨーロッパ(特にイギリス社会の高齢化・貧困・民族性・家族・教育・国際化など)、2学期はアカデミックの土台をなす思想家たちのセオリーについて学びました(マルクス・マルサス・ニーチェ・フロイト・ボーヴォワールなど)。
世界史が弱くてヨーロッパについての知識はほぼゼロ、思想家たちに至っては名前をうろ覚えしていたに過ぎないレベルの私にはとっては頭が霞むような内容のレクチャーでした…。

●●選択科目では●●
20th History and International RelationsではInternational Relationsに関わるセオリーと第一・第二次世界大戦、冷戦、その後の世界情勢などの具体的な事象について学びました。セオリーでは、RealistやらLiberalistやら、そのneoやらなんちゃらとわけのわからない名前のグループが国際関係をどう見るのかを延々と学びます。
国際関係という響きに惹かれて選んだ学科でしたが、国際関係学は簡単に言えばなぜ紛争・戦争が起こるのか?を勉強する学科なので、1年中殺し合いについて話しあうことになります。渡英前は緒方貞子さんを尊敬して国際関係学を学びたいと思っていたのですが、授業を重ねるうちに次第に気分が悪くなっていき、やがて進学先に国際関係学を選ぶのはやめようかなと思うようになりました。
 
 
 

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